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県社会福祉協議会会長 宮下 智満さん(渋川市白井)

【略歴】早大卒。1962年群馬県庁入庁。医務課長、地方課長などを経て01年保健福祉部長。04年保健福祉食品担当理事。05年3月退職、同年7月から現職。

地域の福祉力

◎サロン活動に参加を

 今、福祉分野で最も大きな課題の一つは、「地域の福祉力」をいかに高めるか、ということである。

 今年四月からの改正介護保険法では、地域密着型サービスなど日常生活圏での支援と介護予防重視などが取り入れられ、障害者福祉の分野でも、身近な地域で小規模なグループホームなどで生活できるよう施策が進められている。介護、子育て、安全なまちづくりなど、あらゆる分野で地域の福祉力が求められている。

 地域で要援護者を支えるためには、その地域に質量ともに水準の高い各種サービスが必要である。しかし、それだけでは不十分である。真に地域で支えるためには、家族はもとより地域住民の積極的な参加と協力が不可欠である。国や自治体に頼っているだけでは、地域の福祉力向上などとても期待できない。

 残念ながら、かつて地域社会が担っていた近所の助け合いという相互扶助機能は、さまざまな理由で大変弱体化してしまっている。それを新しい視点で再構築していく必要がある。

 そのために、さまざまな活動が始まっているが、多くの人にぜひ積極的な取り組みをお願いしたいのが「ふれあい・いきいきサロン」活動である。

 サロンは、歩いて行ける程度の身近な地域で住民の皆さんが協力し、地域の力を集めて活動していく「地域の支え合い」の場である。高齢者だけでなく、子育て中の親子、障害のある方など、閉じこもり、孤立しがちな人たちが気軽に集まり、仲間づくりができる活動である。

 今年の八月現在、県内には約千カ所のサロンが設置され、実にさまざまな活動が展開されている。県社会福祉協議会では、サロンの設置目標数を民生委員・児童委員の数とほぼ同じ四千カ所と定め、市町村社会福祉協議会、民生委員・児童委員さんと協力し、その設置を推進している。

 地域の人なら誰でも、サロンを始めることができる。まずは地域の行事などでニーズをキャッチ。次はきっかけづくりで、地域の人に声をかけて参加者や協力者を集める。活動の担い手となる中心メンバーが集まったら、サロンの方針や活動内容を考える。開催場所は参加者が歩いて行ける範囲内で、気兼ねなく過ごせる場所、具体的には公民館や集会所、自宅などを確保する。後はみんなで楽しく運営するだけである。

 しかし、特別な補助制度は設けていない。たとえ時間はかかっても、地域の人たちの力だけでニーズをくみ上げ、サロンを立ち上げ、運営していくこと、それがまさに地域の福祉力向上の大事な一歩になると思うからである。

 本当に小さな、手づくりの活動であるが、これが県内くまなく行き渡ったとき、本県の地域福祉の基盤は盤石なものになると思う。

 多くの皆さんが自分の地域で、サロン活動に挑戦してくれることを願ってやまない。






(上毛新聞 2006年9月13日掲載)