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県環境アドバイザー連絡協議会代表 鈴木 克彬さん(富士見村石井)

【略歴】成城大卒。元ナカヨエンジニアリング社長。県環境アドバイザー連絡協議会代表、ぐんま日独協会事務局長、前橋市フォークダンス協会副会長。

ドイツ鉄道事情

◎乗り降りで利便性高い

 時刻表を見ていれば、何時間でも飽きないほどの鉄道ファンである私は、トーマスクック社のヨーロッパ鉄道時刻表も入手し、独自のスケジュールで海外の鉄道の旅を何回か経験している。今回は、ともに世界でトップクラスの日本の新幹線とドイツの超特急ICEに代表される両国の鉄道の実態を比較してみたい。

 まず、類似点から見ると、豊富な種類の列車が緻密(ちみつ)で正確なダイヤで運行されている。超特急、特急、急行、快速、各駅停車等が頻繁に走っているが、連絡・乗り換え時間も巧みに配慮されている。この要因は、両国とも世界の中でも教育レベルが高く、こだわりやできちょうめん、まじめな性格を持つ国民性と鉄道会社社員の優秀・勤勉性ゆえではないかと思われる。

 次は、風景。砂漠化が進む今日、木々の緑、農村部の集落、草原、草花の美しさ等、日独両国の鉄道旅行は飽きることがない。また、列車の乗り心地を含め、清潔さ、治安、サービス等、両国は抜きん出ていると思う。ドイツでは、都市部の地下鉄も安心して乗れる。また、鉄道会社ドイツバーン(DB)の車掌のサービスもよく、何を聞いてもわれわれに親切に英語で答えてくれる。なお、DBの経営形態は日本のJRと同じく半公共的な民営型である。

 では、相違点は何か。まず第一は、ほとんどの大都市で路面電車(市電、ドイツでは「トラム」という)がスピードを出して頻繁に走っている。この市電は、ほとんどが郊外から市街地を通って反対側の郊外へという路線で、市民の多くが利用している。

 驚いたのは、ドイツでは列車だけでなく、日本の山手線、中央線のような電車から、地下鉄、市電、バス等、すべての乗り物に改札口がなく、乗車券をチェック・回収する機械もない。駅員もおらず、乗客はみんなスイスイと乗り降りしている。このシステムは、切符さえ購入すれば各都市ごとのゾーン内を、バスを含めすべての公共交通を自由に利用できるもので、経費、手間を含め、利便性が高い。

 さらに、ユニークで面白いのは、ドイツでは犬も切符を買って、堂々と電車や地下鉄に乗せることができる。運賃は大人料金の半額で、切符は自動券売機で購入する。「もし粗相をしたら…」との私の質問には、「しつけがしてあるから大丈夫」と軽く言われてしまった。

 そのほか、日本でも有名なパークアンドライド方式。これは公共交通利用促進策の一環として実施されているもので、郊外の駅(市電・バスも含む)に車の無料駐車場をつくり、市民はそこに車を置き、公共交通を使って市街地に通勤、買い物等に出てくる、という方策である。そして最近は、駅の一番近くに、利便性・安全性への一層の配慮から、女性専用駐車場まで誕生させていた。

 今後とも、一人の鉄道ファンとして、健康である限り、いつまでも好奇心をもって、日本の、そして、たまには外国の鉄道の旅も楽しみたいと思っている。






(上毛新聞 2006年9月15日掲載)