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日本画家 上野 瑞香さん(富岡市七日市)

【略歴】東京芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻日本画第三研究室修了。05年3月より富岡市内にアトリエを持ち、現在は個展、グループ展を中心に活動。

色の組み合わせ

◎生活の中に応用できる

 先日、「Wellmet!展」の来年度幹事から、次回のテーマに関連した質問メールが届きました。同展は、昨年から毎年五月に富岡市七日市のアトリエU・Eで行われる大学の日本画科同窓生による七人展です。

 Q 今日、印象に残ったものの色はなんでしたか?

 A 浅葱(あさぎ)色とクリーム色と焦げ茶色。秋を感じました。

 そう答えてから、読み返してみて、びっくりしました。浅葱色を見て秋を感じたのです。浅葱色(読んで字のごとく、葱(ねぎ)の葉の浅い色で薄青緑色のことなのですが)。普段私は、浅葱色を見ても秋を感じません。むしろ、逆に春や夏を感じていると思います。そして秋と聞いて思い浮かぶ色は、紅葉した葉をイメージする色、つまり赤やオレンジや茶色などです。皆さんもそうではないでしょうか。

 しかし確かに、その日私は浅葱色を見て、秋を感じたと答えたのです。では一体、なぜそう思ったのでしょうか。

 それは、よく考えてみると、私の中で浅葱色とクリーム色や焦げ茶色を組み合わせることによって、秋をイメージする色へと変化したのです。単色では春や夏をイメージする色が、三色隣り合うことで、互いに響き合って、逆に秋を思わせる色へと変わったのです。

 ほかにそうした例を探してみると、単色では春をイメージする芽吹きの色の黄緑色や鶸(ひわ)色も、紫色や渋いオレンジ色、臙脂(えんじ)色などと、それぞれ、もしくは数色組み合わせることによって、秋を感じる色へと変わります。また、単色では秋を感じさせる赤やオレンジ色も、青や水色を合わせることによって、夏をイメージさせることができます。

 このように色は、ほかの色との組み合わせによって、単色のときにその色が与える印象とは全く違ったイメージをつくることができるのです。つまり同じ色を使ったとしても、違う色と合わせることによって、何通りものイメージにつくり変えることができるわけです。

 そしてこれは、生活の中に応用することもできます。実際には色彩のほかに素材感もプラスされるので、一概にはいえない部分もあるのですが、例えば、一年を通して同じじゅうたんを使っていても、カーテンの色を変えるだけで、もしくはソファに違う色の布をかぶせるだけで、夏向きの雰囲気を秋冬らしいインテリアに変えることも可能です。

 また、同じ一枚のスカートでも、上に着る物や羽織る物の色を変えるだけで、すべてを買い替えなくても、四季を通じて使うことができます。花瓶を置いたり、スカーフをするなど、一部に挿し色をするだけでも、がらりと雰囲気が変わり、生活に季節を取り込むことができるのです。

 もちろん、季節感だけでなく、「楽しい」「温かみのある」「落ち着いた」「優しい」、あるいは「和風」「洋風」といったことまでも、色の組み合わせひとつで、イメージを変えることができるのです。

 インテリアや服装に、今までとは違った組み合わせを見つけて、季節感を取り入れたり、イメージチェンジをしてみるのも、ときには楽しいことだと思います。






(上毛新聞 2006年10月6日掲載)