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群馬大学教育学部助教授 西薗 大実さん(桐生市東)

【略歴】東京都出身。東京理科大大学院修了。薬学博士。専門は家政学と環境。現在は国や県が設置する環境関連の複数の審議会で委員を務める。

地球環境

◎欠かせない温暖化対策

 地球環境問題というと、あたかも地球に問題があるかのように聞こえるが、はたしてそうだろうか。

 地球史をさかのぼってみると、暑い地球、寒い地球、それぞれの時期があった。

 暑い地球の代表は、一億年ほど前の「白亜紀」だ。海底の火山が多量の二酸化炭素を放出し、その濃度は今の十倍もあり、気温は一〇から一五度も高かったと推測されている。北極や南極にも植物が茂り、海面水位は今より二百メートル以上高く、現在の陸地の三分の一は海の底だった。今の地形なら、富士見村の赤城大鳥居あたりが海面で、前橋市街地は水没ということになる。

 この暑い地球は「恐竜の時代」だ。恐竜というと、映画『ジュラシックパーク』のおかげでジュラ紀が有名だが、続く白亜紀の方が気温が高く、恐竜全盛時代だったようだ。何しろ大型の爬は虫ちゅう類である。気温の高いこの時期にこそ、活動できたのだろう。

 その後、数千万年かけて大気中の二酸化炭素は減った。どこへいったのだろう。白亜紀に現れた被子植物が大躍進し、二酸化炭素を取り込んで森林をつくり、さらに長い年月をかけて化石燃料となった。別の仕組みもあった。白亜とは石灰岩のこと、海に溶けた二酸化炭素が貝やサンゴなどの海洋生物に取り込まれ、やがて海底に堆たい積せきした名残である。こうして、二酸化炭素は地中に固定された。

 地球は低温化し、約百万年前には氷床を有する氷河時代になり、現在に至っている。

 氷河時代は、数万から十万年ごとに低温期と高温期が繰り返し現れる。地球の多くの部分が氷床に覆われる「氷期」(狭い意味での氷河期)と、極地方や高山のみに氷床が後退する「間氷期」である。寒い地球の代表は氷期だ。約二万年前に終わったウルム氷期は現在より八度も低温で、長い毛に覆われた大型哺ほ乳にゅう類、いわば「マンモスの時代」だ。

 そして、私たちにとって、ちょうどよい地球が現在の間氷期で、これこそが「人間の時代」である。

 暑い地球も、寒い地球も、そして今のちょうどよい地球も、すべて地球環境のワンシーンであり、それぞれの環境に適した主役が存在した。地球にとって、どの環境も問題はない。しかし、人間にとっては、暑い地球、寒い地球は問題である。

 二酸化炭素やフロンなどの温室効果ガスの増加は、地球を白亜紀のような高温環境に向かわせている。ちょうどよい地球になるまで数千万年かかってきた変化を、今のままでは、わずか数百年で巻き戻してしまいそうである。その間に恐竜が復活するということは考えられないとしても、京都議定書の履行をはじめとする対策が欠かせない。






(上毛新聞 2006年10月7日掲載)