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NPO法人源流理事 豊原  稔さん(高崎市倉渕町岩氷)

【略歴】榛名高校卒。看板屋歴25年。スポンサーだった「はまゆう山荘」にも勤務。地域づくり団体「榛名まちづくりネット」会員。趣味はパラグライダー。

山の環境保全

◎景観損なう案内や目印

 ぐんま百名山に選定されている浅間隠山は、二度上峠付近の登山口から山頂まで九十分ほどで登れ、山頂に着くと、目の前に雄大な浅間山をはじめ三百六十度の大パノラマが展望できることから、週末ともなれば大勢の登山客でにぎわっています。独立峰で風当たりが強いせいか、標高のわりに森林限界が低く、頂上部は木が生えてなく、素晴らしい展望が得られることが人気の一つのようです。初めてこの山に登り、山歩きのとりこになった人も多いと思います。

 私も小学生のころ、市倉尾根からやぶの中を登ったのが最初で、その後、おむつを当てたわが子を背負って登ったり、倉渕山岳会でわらび平森林公園キャンプ場からの登山道を整備するために登ったりしました。一九九三年には仲間たちとパラグライダーで山頂から飛び出し、山頂上空を飛んで旧倉渕村の川浦地区に降りたこともあります。

 この山の名称は中之条方面から見たとき浅間山を隠すので、一般的にそう呼ばれていますが、地元では山頂部が矢の上端の弓の弦を受ける矢や筈はずの形をしていることから、矢筈山と呼んでいます。日本山名辞典には矢筈山(岳)が二十七山もあり、日本中に矢筈の形をした山が多いようです。また、高崎市街から見ると、この山が高く見えることから、川浦富士とも呼ばれています。

 昔は登る人が少なく、頂上は短い草に覆われていましたが、近年、たくさんの登山者が登るようになってから、いろいろな問題が起きています。

 一つには、道が雨水で掘られる雨裂によって深い溝状になることです。

 雨水は直登降の道を流れて土をえぐりますから、なるべくジグザグ道を歩き、近道をしないでほしいと思います。ジグザグ道なら雨水は緩やかに流れて山肌に染み込んでゆきます。そして、頂上部も踏み付けによって裸地化し、土が流れて三角点の標識が倒れそうな状況ですから、頂上のロープから外に出ない、草の上で休まないよう、心掛けてほしいものです。

 また、ビニールテープやペンキの文字が増えて、自然景観にそぐわない感じがします。

 先月に二度、千葉県浦安市から林間学校に来た子供たちと一緒に浅間隠山に登りました。そこで、張り付けたままのテープや、あちこちに「出口」とペンキで書かれた文字、「健脚コース」などと直登を案内するサインが目に付きました。山での過剰な案内や目印は、自然景観を損なうと思います。浅間隠山を取り巻く地元の各団体がネットワークをつくって山の環境保全を相談し、統一した整備を行う必要があるように感じます。

 余分な話ですが、パラグライダーでわらび平キャンプ場からテークオフし、浅間隠山頂まで飛んでゆくチャンスを狙っています。






(上毛新聞 2006年10月17日掲載)