視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
県立尾瀬高校自然環境科主任教諭 松井 孝夫さん(沼田市善桂寺町)

【略歴】92年千葉大卒。西邑楽高を経て、97年尾瀬高教諭となり、翌年から現職。同校理科部顧問。ぐんま環境教育ネットワーク代表理事。

環境教育は道徳教育

◎すべての大人の責務

 「環境教育」は「道徳教育」でもある。尾瀬高校に勤務して十年間、環境教育に携わってきた中で、何度も感じたことである。

 どちらも、正しいモラル(考え方や態度)を身に付けさせるという点で一致している。小中学校には「道徳の時間」があるが、高校の時間割にはそれがない。高校では必要がないのであろうか…。そうではない。高校では「すべての教育活動を通して道徳教育を行っている」のである。「命の尊さ」や「ものを大切にする心」「人と人とのコミュニケーションの大切さ」など、課外活動も含めて、多くの場面で指導している。これらは、いずれも環境教育のキーワードでもある。

 しかし、先生方に「環境教育を実践していますか」と聞くと、「担当ではないから…」と返事が返ってくる。当たり前のことを、当たり前のように指導している先生方には、「環境教育」という呼び方は通用しない。むしろ専門外だとして、敬遠されてしまう恐れさえある。

 現在、環境教育は「持続可能な社会の実現のための教育」として、食、居住、人口、歴史、文化など、一見、環境とは縁のない分野とも思えるような、多岐にわたる要素を含むものとして新たな展開を見せている。

 そうした環境教育では、「体験を通じて自ら考え、調べ、学び、行動する」といった過程が重視されてくる。これは、環境教育のねらいが「環境倫理」といった情緒面の育成だけではなく、環境に対しての「行動力・実践力」を重視しているからである。情報を与え、教え、諭すだけでは行動力は身に付かない。環境教育では「多様な分野」を対象とした「主体的な体験型の学習」が大切なのである。

 このような環境教育は、学校の教員だけでなく、地域住民を中心とした学校外の多くの人の協力を得て初めて実現できるのである。

 ところで、県内には「自然、環境、野外、教育、子供、冒険、エコロジー、スローライフ、コミュニケーション、エコツーリズム、心と体の安全、野遊び、地域、農山村文化、暮らし、先人の知恵、自然資源の利活用…」をキーワードとして「ぐんま環境教育ネットワーク」(任意団体)が設立されている。

 このネットワークは、さまざまな立場や考え方を持った会員が、互いに情報交換することで、多様な環境教育活動を支援することを目的の一つとしている。環境教育とは一見、無関係な感じさえする分野の会員もいるが、こうした人たちが互いの立場を尊重しながら連携していることが、このネットワークの最大の特徴であり、メリットである。こういった団体も含め、多様な分野から発信される情報を活用して、自らの活動のヒントを見つけてほしい。

 環境教育、道徳教育はすべての大人の責務であろう。個々が主体となって、次代を担う若者たちへの教育にかかわるべきである。






(上毛新聞 2006年11月4日掲載)