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中央ユーラシアクラブ群馬事務局長 後藤 康子さん(前橋市西片貝町)

【略歴】共愛学園高卒。中央ユーラシアクラブ群馬事務局長。中央アジア・コーカサス研究所理事。日本ウズベキスタン協力委員会委員。インテリアゴトウ取締役会長。

中央アジアの人々

◎本県との交流深めたい

 ここ十年前後、シルクロードの写真展や文化講演会を県内各地で開催。極微だが、異なる文化や民族の紹介に携わり、国家、民族、宗教を超えてフラット化した世界に触れてきた。ふと振り返ると、幼い時、夜空を見上げて「広い地球には、どこかにもう一人の私がいる」と信じていたことを、昨日のように思い出す。

 先日、中央アジアのキルギス共和国の青年留学生から電話があり、東京・渋谷のJICA(国際協力機構)にいるので会いに来てほしいという。翌日、会いに行くと「上司から後藤を訪ねるように言われた」という。彼の上司とは、平成十四年二月に当時の萩原弥惣治前橋市長を表敬訪問したキルギスの元留学生であった。彼も、上司も、顔付き・体形は不思議なほど日本人そっくりである。キルギスの人々のDNAは、日本人と一番近いものを持っていると言われている。

 シルクロードの交差点といわれる中央アジア。シルクの産地で有名なウズベキスタン共和国では、今でもシルク産業に取り組む町がある。九月二十一、二十二の両日、富岡市の国史跡、旧官営富岡製糸場を主会場に開催された「シルクサミット2006in富岡」にウズベキスタンの留学生(シルクの町出身)が参加した。講演が終わると、彼は本県で蚕糸の勉強がしたいと言った。古里のシルクの町で、世界一素晴らしい群馬の蚕糸技術が取り入れられれば、と夢を語った。彼もまた日本人によく似た青年だった。

 平成十五年八月から九月にかけて、ウズベキスタンの農業高校の先生方が本県の農業を勉強するためにやって来た。数人の先生が私に言った。「友達にそっくりな後藤をウズベキスタンへ連れて帰れば、後藤も友達もビックリするよ」と。

 中央アジアの国々は政治と宗教は分離されているが、モスリムと呼ばれるイスラム教徒が多い。見事なイスラム建築様式の寺院がたくさん残され、世界遺産となって観光客を楽しませている。特にブルーの幾何学模様のタイル張りと素焼きれんがのバランスは色も形も素晴らしい。

 私たち中央ユーラシアクラブ群馬では十一月二十七日から十二月三日まで、前橋市内で「シルクカントリー群馬の源流を探る シルクロード写真展」を開催する。また、最終日の三日には県庁を出発し、本県の蚕糸に関係する施設を巡って、富岡製糸場を目指す「めざせ世界遺産登録・ぐんまシルクロードサイクリング」を実施する。また、来年三月には「ウズベキスタン・テルメズ遺跡発掘中の加藤九祚先生を訪ねる旅」も計画中である。

 シルクロードと縁の深い群馬と中央アジアの国々、人々との交流がさらに深まることを、また、富岡製糸場の世界遺産登録が実現できることを、県民の一人として願ってやまない。






(上毛新聞 2006年11月8日掲載)