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県社会教育委員 永田 真子さん(吉岡町下野田)

【略歴】公文式教室指導者。地域の子供に本の読み聞かせなどを指導するボランティアグループ「ねこの手VG」の事務局を務める。今年6月から県社会教育委員。

子供を持つことで親は

◎観察していく力養おう

 子供を持つことで親はさまざまなことを経験します。わが子の具合が悪くなれば、病院に連れていき、体によい食事を心掛けたり、早くよくなることを祈ったり…。また、学校でいじめられたと泣いて帰ってくることがあれば、どうしたらわが子の心が癒やされるかを真剣に考え、親としてどう対応すればよいか、あれこれと悩むこともあるでしょう。

 母親は父親と違い、自分のおなかの中でおよそ四十週間、わが子の成長を見守ります。自分の分身のような気持ちがぬぐい切れず、ついつい理性より感情が先にたってしまうものです。

 私も中三と小六の母親として、一喜一憂しながら過ごしています。第一子の年齢が親のキャリアだとすれば、失敗したり、後悔したりしながら、親は子によってだんだん親らしく、その子の親にさせられるものなのだと実感しています。

 わが子を通じて、いろいろなお母さんとあいさつを交わせることに感謝し、ときには互いの悩みを打ち明け、心が救われることもあります。

 数年前、わが子の友達のお母さんから、すてきなエピソードを教えてもらいました。ぜひ、それを皆さんに紹介したいと思います。これは、母親(妻)の過保護なまでの干渉を見るに見かねた父親(夫)が、子育てを道に例えて話した内容です。

 おまえのように、子供が何かをする前から、目の前の小さな石ころまで拾ってあげていたら、この子は自分の力で生きていくすべを身につけないだろう。この子の人生がずっと平坦で、アスファルトの道であるとは限らない。ときには、砂利道でつまずいてけがをすることもある。親は、転んだりけがをしたら、「大丈夫か」と優しく声をかけ、自分の足で立ち上がったなら「よく頑張ったね」と心を癒やし、傷の手当てをしてあげればいいんだ。そして、今度はつまずいたり、けがをしないように、親としてのアドバイスや知恵を貸してあげればいい。親が子に手を差し伸べるのは、子供自身の力ではどうしようもない大きな岩が立ちはだかったときだけ。そのときは共に手を携えて払いのけてあげればいいんだ。人生を砂利道に例えたら、いろんな石ころにつまずき、傷つき、そして強くなることも、すべてわが子の経験となり、自立につながる。おまえがしていることは、子供を駄目にしているのではないか…。

 父親としてのビジョンと、この話を聞き入れた母親の素直な心に私は感動し、わが家でも夫婦でそのことを話題にしました。

 「親」という字は、木の上に立って見ると書きます。親は、わが子の可能性と成長を見守り、観察していく力を養うことが大切なのではないでしょうか。観察力が向上すれば、子供は親が思うよりも案外たくましいことに気がつくかもしれません。

 わが子への思いから地域の子供たちへ、そして社会に目を向け、現在、私は地域のボランティア活動にも携わっています。これからも親として社会人としての精進は続きます。






(上毛新聞 2006年12月8日掲載)