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関東学園大経済学部教授 高瀬 博さん(太田市東別所町)

【略歴】東京学芸大大学院修士課程修了。日本体育学会群馬栃木支部幹事、日本肥満学会会員。著書に「ライフスタイル自己改革講座」など。千葉県柏市出身。

学校行事の充実

◎豊かな人間性はぐくむ

 学校生活で最も印象に残っている場面は「修学旅行・遠足」であることが、大学生六百人に対して行ったアンケート調査の結果、明らかとなった。二位「部活動の練習・試合」、三位「友との語らい」、四位「体育祭・運動会」、五位「文化祭・合唱コンクール」と続き、「学校行事」の印象の大きさが浮き彫りとなった。だからといって、学校生活において日常の繰り返しである「教科の学習」が重要でない、とは誰も思わない。

 新学習指導要領(中学校)では、「教科の学習」と両輪をなす「特別活動」の内容を「A 学級活動、B 生徒会活動、C 学校行事」と規定し、改定の骨子となる「生きる力」の育成という基本コンセプトを実現するために「豊かな人間性・社会性」「各学校の創意工夫」などが求められている。

 「特別活動」には、教室での「教科の学習」では対応できない「教育プログラム」が求められており、「学校行事」はその中心的役割を担うものである。学校行事の目的は「全校又は学年を単位として、学校生活に秩序と変化を与え、集団への所属感を深め、学校生活の充実と発展に資する体験的な活動を行うこと」とし、(1)儀式的(2)学芸的(3)健康安全・体育的(4)旅行・集団宿泊的(5)勤労生産・奉仕的―各行事の内容を示している。

 さらに、指導計画作成に当たっては「学校や地域及び生徒の実態に応じて、種類ごとに行事及びその内容を重点化するとともに、行事間の関連や統合を図るなど精選して実施すること。また、実施に当たっては、幼児、高齢者、障害のある人々などと触れ合い、自然体験や社会体験などを充実するよう工夫すること」と指示している。

 また、新学習指導要領の特別活動全体の「目標」において、「集団の一員」を「集団や社会の一員」と改め、「体験」と「社会性の向上」を重点としていることからも、「学校行事」への期待の大きさが示唆される。

 「学校行事」の性格に、他の教育活動と比較して重要な特質があるとされるのは、総合的であること、非日常的であること、大規模なものが多いことであり、単調になりがちな学校生活に変化とリズム、秩序を与えてくれるものである。その結果、多くの人々が学校生活の最も印象深いものとして「学校行事」を挙げる。その一方で、「学校週五日制」や「授業時間の確保」などの理由で「精選・縮小」が余儀なくされており、「生徒主導なのか、学校主導なのか」「教師間の認識の相違」などの問題点も存在している。

 「自己中心的」「誤った自尊心の強さ」「コミュニケーションが苦手」などと批判されることの多い子供たちだが、各学校の創意工夫により「学校行事」が実践され、「体験」から、豊かな人間性・社会性がはぐくまれ、卒業後、幸福な人生を歩むことを願ってやまない。






(上毛新聞 2006年12月12日掲載)