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国土交通省高崎河川国道事務所長 前佛 和秀さん(高崎市栄町)

【略歴】北海道生まれ。北海道大大学院修了後、1991年度に建設省(現国土交通省)入省。岐阜県、東北地方整備局、本省大臣官房、道路局を経て今年7月から現職。

効果的な道路整備

◎推進したい「見える化」

 群馬県は自動車王国で、運転免許保有率は全国一位と高い。そのため、幹線道路では朝夕に渋滞が発生し、事故も多発しています。残念なことに、人口当たり交通事故発生件数は全国ワースト2位です。

 「事故」「渋滞」の解消は重要な課題であり、高崎河川国道事務所では、道路事業として重点的に取り組んでいます。しかし、一方で「道路行政が何をやっているか、国民に見えていない」との批判もあります。このため、道路整備の必要性等を国民の皆さんに説明し、正しく評価していだくために民間企業で広がる「見える化」を用い、「道路見える化計画」として、今年からスタートしました。

 これは、道路の課題をデータできちんと把握し、その最適な解決法を見いだし、解決を急ぐべきところから対策を講じることです。

 「事故」の現状を把握する場合、指標として通常「死傷事故発生率(事故率)」を用います。これは、死亡・負傷事故が発生する確率を示す指標で、対象となる区間の一年間の事故件数を年間交通量で除して算出します。

 この指標は、各区間の危険度を比べることができ「全国共通の尺度」として利用されてきました。ただし、交通量が多い区間の方が少ない区間より小さくなる傾向があるので、都市部の道路の危険度が過小評価されることがあります。事故の実情をより詳細に把握するためには、事故率だけでなく、「高齢者事故件数」「歩行者事故件数」「夜間事故件数」などからも分析が必要です。

 「渋滞」の現状を把握する場合、指標として「渋滞損失時間」を用いることがあります。これは、ある区間を渋滞がないと想定して走る場合の時間と実際にかかった時間の差を一年間分合計した数値です。所要時間を測定するために当事務所では、ある一定の調査期間で車(「プローブカー」といいます)の位置や速度などの情報を調査し、収集したデータを基に幹線道路の区間ごとに渋滞損失時間を計算しています。

 しかし、一日中混雑しているわけではなく、ある時間帯、ある場所で特に渋滞が発生しています。渋滞の実情をより詳細に把握するためには、上り線・下り線、区間ごと一時間刻みなどで調べることが必要です。

 調査、分析に時間と工夫が必要になりますが、地域の実情をきちんと把握し、効果的な道路整備を行うためには、道路の課題を「見える」ようにすることが重要です。そのため、学識経験者からも助言を受け、県内の県道以上の道路を対象に、「交通安全見える化プラン」「渋滞見える化プラン」として対策優先個所をまとめました。今後は、これら個所の問題解消を重点に取り組みたいと考えております。

 さらに、対策にあたっては、国民の皆さんに必要性や整備効果を説明していこうと考えています。

 詳しくは、高崎河川国道事務所のホームページ(http://www.ktr.mlit.go.jp/takasaki/)をご覧ください。






(上毛新聞 2006年12月29日掲載)