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県社会教育委員 永田 真子さん(吉岡町下野田)

【略歴】 公文式教室指導者。地域の子供に本の読み聞かせなどを指導するボランティアグループ「ねこの手VG」の事務局を務める。昨年6月から県社会教育委員。

受験シーズンに当たり

◎最終目標は子供の自立

 受験シーズンに突入しています。受験生を抱える家庭は本人はもちろん、家族も落ち着かない心境ではないでしょうか。

 わが子が受験ともなれば、自分の経験が思い出され、努力をしない姿を見れば、胃もきりきりと痛むこともしばしば…。いっそ自分が受験する方がどんなに楽かという気持ちにさえなります。こんなとき、自分が受験生だったころの親の心境がいかばかりだったのかと想像し、親心が理解できるようになります。

 人生は、繰り返しその役割を順番に経験していくものなのかもしれません。人は勝手なもので、その立場にならないと理解できないこともあるのだと実感します。

 子供が幸せに生活できますように…と親は望みますが、その幸せとは何かと問われれば、千人いたら千通りの価値観があるでしょう。有名大学に進学させたい、健康ならばそれでいい―など、各家庭の経験や周りで出会う人たちの影響で、わが子に対する親の願いや欲は無限に続き、ときには変化もしていきます。

 仕事柄、子育てが終わった先輩と交流を持つ機会に恵まれている私は、たくさんの情報を得ることができ、目先のことにとらわれがちな部分を諸先輩方から軌道修正してもらっているような気がします。もし、そのような出会いがなかったら、私はとんでもない子育てをしていたかもしれません。親を含め、目上の人から、子育てを振り返って感じることや良かった話を聞けることは、とてもありがたいことです。

 「学力で人を評価する時期は、長い人生の中ではほんの十数年にしかすぎない。社会に出てからの歳月の方がはるかに長く、そこで通用するには学力ももちろん重要だが、働くことが好きで、よく気が利き、人にかわいがってもらえる資質も必要。わが子を自立させることが最終目標で、親も子離れする時期を見逃さないこと」。私が師と仰ぐ先輩のこの言葉が、今の私の子育て観になりました。

 さて、わが家では親離れ、子離れのタイムリミットを宣言しました。

 「うちには、あなたたちに残してあげられる財産はないし、裕福な家庭でもない。でも、教育は人の器をつくるものだから、本当にやりたいことにはたとえ借金をしてでも支援してあげます。その代わり、学校を卒業したら、家を出て自分で生活していけるような気持ちで、よく考えて過ごしなさい」と。

 宣言の後、親と一緒に過ごせることが当たり前だと思い込んでいたわが子たちに、少しずつ変化が表れました。自分の進路や何を学びたいか、真剣に考え始めたのです。私たち親も、社会に出て恥をかかない大人にしたいと意識して、会話を心がけるようになりました。家庭教育の真価が問われるのは、ずっと先になるでしょうが、親の背中を見せつつ、残された子育ての時間を大切にしたいと思います。十年後、二十年後、わが子たちはどんな人生を歩んでいるのか…。子育ての結果はいかに?






(上毛新聞 2007年2月2日掲載)