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国土交通省高崎河川国道事務所長 前佛 和秀(高崎市栄町)

【略歴】 北海道生まれ。北海道大大学院修了後、1991年度に建設省(現国土交通省)入省。岐阜県、東北地方整備局、本省大臣官房、道路局を経て昨年7月から現職。

危機管理

◎防災情報の共有化図る

 昨年、長野や鹿児島などで集中豪雨による災害が発生しましたが、自然災害の発生につながる可能性がある、短時間の局所的な集中豪雨、日降水量一○○ミリ以上の大雨などの発生数が日本の多くの地域で最近増加傾向にあります。地球温暖化の影響でしょうか。

 高崎河川国道事務所では、洪水に対する備えとして、管理する神流川、烏川等での堤防整備などの治水対策を進めています。しかし、時に自然の猛威はわれわれの想像を超えた大きなものとなり、自然災害を完全に克服することは大変難しいことです。そのため、万が一に災害が発生した時でも被害を最小限にするための危機管理体制を整えることも大変重要です。

 危機管理で重要なことは、防災に役立つ情報を関係者間で共有化することです。このため、水位・雨量計の観測機器、監視用カメラ、光ケーブルなどの整備を進め、観測体制の充実を図り、地方自治体や地域住民への迅速な情報提供に努めています。さらに、計画で想定する洪水が発生し、万が一破堤した場合の浸水想定区域と水深をシミュレーションにより求めた「浸水想定区域図」を河川ごとに作製しています。

 平成十七年十月に烏川、今年一月に神流川を公表しました。十七年の水防法改正により、洪水予報河川などでこの区域の指定が義務づけられています。これは、以前に比べ被災経験が減少しており危機意識が低下していること、高齢者や幼児等の被災が近年発生の災害で目立っていることなどから、住民の皆さんに危険の程度を実感できる情報を提供し、災害への準備や避難の仕方などについて考えていただくことを目的としています。これまでに、国管理の河川のうち約八割で公表しています。また、浸水想定区域が指定された市町村は、洪水ハザードマップ等の作製が義務づけられています。私たちとしても最大限協力したいと考えています。

 また、計画的に河川整備を進めることも重要です。現在、国管理の利根川水系について、河川整備計画の策定作業を進めています。社会情勢の変化を受け、九年の河川法改正により、河川管理の目標として、「治水」と「利水」に、「河川環境の整備と保全」が追加されました。さらに、河川整備の目標とする「河川整備基本方針」、今後おおむね三十年間の具体的な整備内容となる「河川整備計画」を策定することになりました。この策定にあたっては、学識者や関係住民の意見を聞くことが規定されました。利根川水系では、「河川整備基本方針」を昨年二月に策定し、現在、「河川整備計画」の策定に向け、学識経験者から意見を伺い、公聴会などにより関係住民から意見を広く聞く作業を進めています。

 自然災害の猛威の備え、これからも治水対策に取り組んでいきます。詳しくは、ホームページ(http‥//www.ktr.mlit.go.jp/tonegawa−plan)をご覧ください。






(上毛新聞 2007年3月2日掲載)