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関東学園大経済学部教授 高瀬 博(太田市東別所町)

【略歴】 東京学芸大大学院修士課程修了。日本体育学会群馬栃木支部幹事、日本肥満学会会員。著書に「ライフスタイル自己改革講座」など。千葉県柏市出身。

健康ダイエット

◎エネルギー収支考えて

 「前の食に 厚味食せば その次は 味わひ淡き ものを食せよ」。江戸時代に、健康の秘訣(ひけつ)を庶民のために、わかりやすく和歌にしたてて作られた「養生歌八十一首」の一つである。「厚味」は、「高カロリー・高脂肪」に置き換えられ、「前後の食事で、摂取カロリーのバランスをとることが重要」がその趣旨である。元になっている「養生訓」(貝原益軒著)は、飲食・運動・休養などについて現代人の健康にも参考になる記述が多いことは有名。

 肥満は突発的な「病気」ではなく、多くの場合は食事などの摂取エネルギーが運動などの消費エネルギーを長期間にわたり上まわったことにより、脂肪が多く蓄えられた「状態」である。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)などを併発しやすく、誤ったダイエットで心身に障害が生じる場合もある。肥満にもいくつかのタイプがあってその対処法もさまざまであるが、専門家の多くは「一般的には、食事と運動のエネルギー収支を適切にすることが大事で、そのために健康的な食習慣やライフスタイルをつくり上げることが重要である」と述べている。そのためには日々の食事や運動の実態を的確に自己評価し、コントロールすることが必要になってくる。

 日本肥満学会は「肥満・肥満症の指導マニュアル」の中で、「行動療法」によって肥満症の治癒成績が向上すると述べ、「食事日記」「生活日記」「体重日記」などの効果を紹介している。マニュアルの著者は「スコア式減量ダイエット法」と称して、かんたんに食と運動のエネルギー収支を記録する方法(減量ダイエットのための熱量の簡易記録法の実践・「保健の科学」一九九七年)を考案し、実践の結果、一定の成果をあげることができた。

 主な内容は、第一に「朝食」「昼食」「夕食」「間食」「運動」について、約二百キロカロリーを一単位として得点化し、これを二週間にわたり累計する。その際、目標達成に向けて努力することが大事である。第二に、自己評価(得点累計)が客観的結果(体重または体脂肪の増減)と比べ、的確かどうかを確認し、誤っていれば修正する。面倒なカロリー計算をできるだけ簡略化し、一日分の計算・記入に一分程度しか要しないことと、食と運動のエネルギー収支を同時に把握しようとしたことなどが特徴である。

 野生動物は必要な量だけを食べるし、太らない人は、食の「自動停止装置」が正常に作動しているらしい。「昨日食べたものを忘れる」私たちには「記録・メモ」は有効である。慣れてくると、自然に頭の中でプログラムができあがって「今夜は宴会だから昼食は軽く済まそう」「昨日は全く動かなかったから、今日は散歩を長めに」と考えるようになる。○○を食べる、○○を食べない式ダイエットや、高価な器具などを購入する前に一度試してみてはどうだろうか?






(上毛新聞 2007年3月9日掲載)