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県社会教育委員 永田真子(吉岡町下野田)

【略歴】 公文式教室指導者。地域の子供に本の読み聞かせなどを指導するボランティアグループ「ねこの手VG」の事務局を務める。昨年6月から県社会教育委員。

お彼岸

◎ご先祖に感謝する心を

 「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、不思議なくらいお彼岸を境に気候の変化が訪れます。

 今は亡き義父は、脳内出血で倒れ、十一年間体が不自由な生活を送りました。今から三年前、上の子の小学校卒業、中学校入学時は、まだ義父も健在で、孫の晴れ姿に涙を流して喜んでくれました。その時わが子たちと撮った写真が、義父との最後の写真となりました。その夏に義父は他界し、早いもので六回目のお彼岸を迎えます。

 この春、上の子は高校に、下の子は中学に入学します。もう永田のおじいちゃんと一緒に写真を撮ることができないことに、子供たちは一抹の寂しさを感じています。

 年二回のお彼岸は、ぼたもちやおはぎを作り、家族でお墓参りに行きます。そして子供たちに、命の尊さやご先祖様に感謝する心を伝えています。また家族のルーツに触れ、善い行いをすればご先祖様は喜び、悪い行いをすれば嘆き悲しむことも教えています。

 私の実家には、父のお手製の小さな仏壇があります。そこには父方の両親の小さな位牌(いはい)、そして仏壇の近くには、父方の家族と母方の家族写真が飾られています。父は、私が小さいころから、毎日仏壇に炊きたてのご飯とお水を供え、鈴(りん)を打ち、お線香を手向けています。凛(りん)とした姿で、心静かに手を合わせる父の背中。お線香の煙が漂う中、家族で朝食を摂(と)る風景は、今でも記憶に残っています。

 私は、そのような家庭で育ったからでしょう。ご先祖様を大切にする心を親によって育(はぐく)まれたと思っています。その心は、嫁いだ家でも同じです。

 少子化で、一人っ子の家庭も多くなり、お墓の問題も浮上しているようです。中には、嫁いだ家のお墓に入りたくないというお嫁さんもいると聞き、考え方が多様化していることに驚かされます。

 人が亡くなると、お葬式、納骨、お盆やお彼岸などさまざまな弔事があります。仏様の引き合わせといわれるように、普段はなかなか会って話すことのない人たちと、故人をしのんで言葉を交わす。私は、義父の死からいろいろなことを学ばせてもらったと思っています。

 「人は、一人では生きていけない。生きていく上では、誰かの助けを必ず受けて生きている。何百年も前からのたくさんの命に支えられて授かった命。それはとても尊いもの。だから、命のリレーを粗末にしてはいけない」

 子供の自殺や虐待、少子化など、今の社会は憂いの方向に向かっているような気がします。一番大切にしなくてはいけないものは何なのか…。私たち大人は、再度考え直す時期に来ているのではないでしょうか。親から子へ、そして孫へ。大切なことを言葉(会話)と背中(行動)で示していきたいものです。

 「一生懸命、がんばるよ」

 家族で墓前に向かい、命のリレーに感謝し、精いっぱい生きることを誓うことが、一番の供養だと思います。






(上毛新聞 2007年3月17日掲載)