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石材店経営 小堀 良夫(富岡市富岡)

【略歴】 高崎工業高卒。富岡市教育委員長、富岡中央ロータリークラブ会長を歴任。石材店「石匠苑」の社長を務める傍ら、富岡市国際交流協会長。趣味は日本酒。

地域の国際交流

◎ネットワークの必要性

 「コンニチハー、ヨウコソイラッシャイマシター」と日本語の挨拶(あいさつ)で迎えてくれる子どもたち。明るく屈託のない笑顔。私たちに飛びついてきて、背中に乗ったり、手を引っ張ったり―。私たち富岡市国際交流協会一行は今年一月、ベトナム・ホーチミン市にあるストリートチルドレンの施設を訪問しました。

 現地のNGOの「ストリートチルドレン友の会」(略称FFSC)では二十年ほど前からホーチミン市郊外に子どもたちのための施設を開設し、現在では八カ所で約千五百人の子どもたちのケアを行っています。一九九四年にはマザー・テレサも来訪しており、私たちが訪れた「ビンチュウ能力開発センター」には、孤児や劣悪な環境下にある子どもたちが、寄宿したり通ったりして三百人ほどいるとの説明でした。訪問者名簿にはサッカーの中田英寿選手の名前も見えました。私たちは、持参した遊具や文具で交流を行ったのですが、子どもたちの純真な気持ちが伝わってきて、勇気と元気をもらった印象が残るひと時でした。

 ベトナムのストリートチルドレンの数は、二万人とも三万人ともいわれています。民間・非営利の団体であるFFSCの活動は(1)子どもたちへ生活の場の提供(寄宿・日帰り児童に住居や食事を提供)(2)能力開発(無料授業)(3)職業訓練(縫製・刺繍(ししゅう)・パソコン・英語等)などが主なものですが、私が特に関心を持ったのは、子どもたちに月額三千円を教育費として援助する奨学金(里親)制度の存在でした。奨学金を通じて里親となり、三カ月に一回、里子から近況の便りが届く―という内容なのですが、一過性の交流ではない継続的交流の具体的な形の一つとして、協会としても検討していく必要を感じました。

 ところで、県内市町村にある国際交流協会はそれぞれの地域の実情に即しながら、地道な諸活動を積み重ねていますが、残念ながら横のつながりが極めて少なく、独自に行っているのが現状です。昨年、総務省が示した「多文化共生推進プログラム」では自治体と各種団体との連携・協働が提言されていました。私たち民間主体の組織の立場からすると、いま最も必要なことは、各地域組織をつなぐネットワークづくりです。情報の共有・共通認識・活動の展望などにかかわって、組織のネットワークの存在は大きな役割を果たすのではないでしょうか。そういう意味で、県内で活動する日本語ボランティアの方が一堂に集い、相互の情報交換を行っている「日本語ボランティアネットワーク会議」の活動は大いに参考になると思われます。

 国際交流活動のネットワーク化は、各地域での交流活動の質的向上と活発化につながるだけでなく、外国人住民同士の地域間交流も生み出し、いっそう広範な多文化共生社会をつくり出すことに繋つながっていく、と私は確信しています。






(上毛新聞 2007年4月8日掲載)