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関東学園大経済学部教授 高瀬 博(太田市東別所町)

【略歴】 東京学芸大大学院修士課程修了。日本体育学会群馬栃木支部幹事、日本肥満学会会員。著書に「ライフスタイル自己改革講座」など。千葉県柏市出身。

子どもの肥満

◎心のケアを考えよう

 「経済発展の続く中国では、食環境も欧米化しつつあり、一人っ子政策などの社会環境も影響して肥満児が急増していて、対策が急がれている」という話を、研修に来ている中国の大学教員から聞いた。

 子どもの肥満についても、高脂肪・高タンパクの欧米型食生活と慢性的な運動不足が主な原因であり、適度な食事や運動の指導を幼いころから行うことが大切である。そのスタートは、母体(妊婦)に対する適正体重維持の指導であり、出産までの体重増加を一○キロ以内に抑えるといった目安がある。

 次に乳幼児期では、母親を中心とする家族からの影響が大きく、栄養バランスの良い食事を提供することと、好き嫌い無く与えられた食事をきちんと取る「しつけ」をすることが重要である。学童期に入ると「自我」が芽生え、食事や運動に対しても自己主張が強くなる。あわせて自己の体形や運動能力に対する自己評価をするようになるのだが、客観性に乏しく、周囲の影響を受けやすいので、「思い込み」や「ストレス」から誤った食行動を起こすことがある。

 また、全くの無頓着から、好きなスナック菓子や炭酸飲料などを飲食し続けるケースも見られる。いったん肥満におちいると、運動が苦手となったり、いじめの対象となったりして、精神的ダメージを受けやすくなる。このことが運動不足や過食を助長するという悪循環を引き起こすことにつながりやすいので早めの対策が大切である。

 近年、大人の通うフィットネスクラブでも、スイミング、バレー、ダンスなどの「キッズ・プログラム」が充実しつつあり、健康で運動好きな子に育てたいという親が多いことに驚かされる。今や「学習塾」同様、運動にもお金が必要な時代になってきたようである。親はまず、子どもが学校や地域社会のさまざまな「運動機会」に積極的に参加するよう子どもを導き、受け入れる側も、競争原理だけでなく、運動の苦手な子については「心のケア」を第一に考えることが重要である。親、教師、地域スポーツ指導者の意識の向上なくしては、肥満児童を救うことはできない。

 食に関しては、「厳格な食事制限」は子どもに対しては好ましくない。発育期の成長に悪影響があることと、「食べられない」ことに対するストレスから過食に至る悪循環が起きやすいからである。バランスの取れた食事メニュー、菓子類・炭酸飲料などを買い置きしないことや、一人で食事をなるべくさせないことなどを心がける必要がある。重度の肥満の場合は、専門医のアドバイスを受けることが重要であり、思春期以降の「引きこもり」につながらないよう早期のケアが必要である。肥満についても「三つ子の魂百まで」である。






(上毛新聞 2007年4月27日掲載)