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群馬ピアカウンセリング・ピアエデュケーション研究会代表 池田優子(高崎市元島名町)

【略歴】 群馬大医療技術短期大学部卒。筑波大大学院で健康教育学専攻。藤岡総合病院看護部長などを歴任し、現在、高崎健康福祉大看護学部教授。

ピアカウンセラー

◎大学生を中心に養成

 米国では一九六〇年代以来、専門家でないピア(仲間)カウンセラーが行うピアカウンセリングが、専門家のそれと同様に効果があることが示されて以降、多くの大学や危機介入センター、市町村の電話相談、自殺防止のホットラインなどにも広がりをみせてきていた。このようなピアカウンセリングの実態と米国における主体的行動変容を支える健康教育手法を学んだ自治医科大学の高村寿子教授らは日本への適用を試みてきた。

 わが国においては、「人間の性を学ぶセミナー」を受講した自治医科大学看護学部の学生による自然発生的なピアカウンセリング活動が出発点となった。その後、思春期の人々を支える民間団体を基盤に行政レベルで、管内の高校生を対象としたピアカウンセリング講座が栃木県をはじめとして沖縄から北海道まで全国的に開催されるようになった。

 平成十三年にはピアカウンセラーのレベルを一定に保つため、厚生労働科学研究として「思春期ピアカウンセリング・ピアエデュケーションのマニュアル作成及び効果的普及に関する研究」(高村寿子代表)が開始され、効果的な教材と教育方法が検討された。

 開発されたピアカウンセラー養成セミナーは前期コース四日間、後期コース二日間の計六日間(四十五時間・三単位)のカリキュラムである。構成はカウンセリングスキルの理解と修得、セクシュアリティーの理解、ピアエデュケーションの企画・実践の三本柱であり、知識だけでなく、気持ちや感情に焦点を当て自己理解を深めさせる内容の濃いものであった。

 群馬県においては、それまで各高校への専門家の出前授業によるピアカウンセラーの養成という形で単発に行われてきたが、平成十七年モデル事業として初めて藤岡保健福祉事務所主催の養成セミナーとして開催された。それに先立ち十六年度、保健福祉事務所の呼びかけで藤岡地域性感染症を中心とした思春期保健対策協議会が設置され、行政・医療・学校・PTA・教育委員会など総勢二十一人が参加して、思春期の対象を取り巻く関係者の共通理解と協力のためのシステムづくりが開始された。

 このピアカウンセラー養成セミナーを受講した学生たちの中から、十七年度は高崎健康福祉大、上武大の学生四十人が巣立った。十八年度は群馬県保健予防課が主催となり、前記の大学だけでなく県立県民健康科学大、パース学園大の学生三十三人が巣立っていった。セミナーは充実したものとなり、学生たちは「自分の考えを持つということはこういうことなのだ」と強烈な印象を語ってくれた。さらに人の話を聴くこと、積極的に傾聴すること、また聴いてもらえるうれしさをアクティブリスニングやコ・カウンセリング実習で実感できていた。そして学生たちはピアエデュケーションの企画案の作成と実施を体験し、今後の本格的な地域の高校、中学でのエデュケーションに向けた抱負を熱く語ってくれた。






(上毛新聞 2007年4月28日掲載)