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県社会教育委員 永田 真子(吉岡町下野田)

【略歴】 公文式教室指導者。地域の子供に本の読み聞かせなどを指導するボランティアグループ「ねこの手VG」の事務局を務める。昨年6月から県社会教育委員。

母の日

◎見守ってくれる存在

 母の日が近づくと毎年、わが子たちが「母の日のプレゼントは何が欲しい?」と聞いてきます。普段家族の買い物を優先している姿を見ているからでしょう。主人とわが子たちがこそこそと相談し、私に何かしてあげようと思うようです。私はその心に感謝しつつ、きざなようですが、「いつも笑顔で、元気にあなたたちが過ごしてくれることが、何よりのプレゼントよ」と答えています。

 振り返ってみると、私の母もいつもそう答えていました。母親になると、まずは家族のことを一番に考え、自分のことは二の次になります。家族が健康で笑顔で生活できればそれが何よりの幸せだと思えるからでしょう。親子関係は生涯続き、親は子供が自立した生活を送っても、常に子供の生活を案じ、心配し続けてくれるありがたい存在だと思います。

 私の母は、まだ現役で医療関係に携わり、人に尽くすことの喜びを時々語ってくれます。そのまなざしを見ていると、私がどんなに頑張っても母を超えることはできないと思ってしまいます。母方の祖母もそういう人でしたし、父方の祖父も慈悲深い人だったようで、私が社会に貢献したい気持ちに目覚めたのは、親の影響と目に見えないDNAが働いたからかもしれません。

 私は子供のころ、「世の中で一番偉い人はだれ?」と父に質問したことがあります。父は「社会で一生懸命働く人はみんな一番偉い。地位や名誉が偉いのではなく、どんな職業であっても、人の道に外れず、精いっぱい生活している人は偉いのだよ。人は食事をし、排便をし、睡眠をとらなくては生きていけない。そこに人の甲乙などなく、みんな平等だからね」と答えてくれました。子供心に、その教えはとてもインパクトがあり、今の私の人をみる価値観の礎になっていると感じます。

 わが子たちに伝える言葉は、自分が子どものころに親から言われた言葉を引用している場合が多いことに気づきます。ルールを守ることや公共心、思いやりなどの心も育(はぐく)まれる一番小さな社会が家庭です。家庭教育の低下が叫ばれている昨今、せめて正しいことかそうでないことなのかぐらいは、繰り返しわが子に伝え続けていきたいものです。ともに認めあうことの大切さ、人を一つの目で見てはいけないことを説き、広い視野と謙虚さ、慈悲深さを備えた大人になってほしい。地位や名誉に固執せず、我欲やよこしまな考えを持たずに生きることができたら、それはとても理想的な人生ではないでしょうか。

 物があふれる時代に育っているわが子たちに、物をプレゼントすることがすべてではないことを学んでほしい。それには、私たちも親に対して健康に産んでくれたことやいつも見守ってくれる存在に感謝していくことが大切でしょう。「お母さん、いつもありがとう」。母の日は、日ごろの生活を振り返り、普段なかなか言えない感謝の言葉を素直に伝える日にしたいものです。






(上毛新聞 2007年5月11日掲載)