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新島学園短大兼任講師 関野 康治(高崎市貝沢町)

【略歴】 高崎高、早稲田大政経学部卒。銀行勤務を経て同大学院を修了。建設会社法務部門で不良債権処理、企業再生に取り組む傍ら、新島学園短大で講師を務める。行政書士。

憲法と参院選(前)

◎存在意義が問われる

 読者諸兄を驚かそうというのではない。世評、自民党が七月の参院選で敗北すれば下野、つまり政権交代だ、という議論に大いに疑問があるのだ。

 たしかに、橋本元総理のときのように参議院で自民党が負けて総裁が変わり、結果として総理交代がおきても不思議ではない。しかし、それは自民党総裁の交代にすぎない。しかも、憲法は衆議院を国政の中心においているのに、衆議院で「三分の二以上の多数」を占める与党が参議院で少数派になったからといって政権交代だというのでは、憲法が衆議院を国家意思決定の中心においた意味がない。だから、「参議院で与党が敗北すれば政権交代」という議論は「飛躍した議論」といわれることになる。

 では、参議院で与野党逆転したら「内閣は死に体だ、だから政権交代だ」という主張はどうか。これも残念ながら間違いである。理由は簡単だ。

 二つある。まず、「死に体」になるには、野党がすべての衆院通過法案の審議を故意に遅らせ(審議拒否や「牛歩戦術」)廃案に追い込んだ場合、それでも与党が「衆議院における再議決」(五九条)をしないという前提が必要だが、その前提は保障されていない。また野党のそういう姿勢・戦術は国民にそっぽを向かれるかもしれない。それこそ税金の無駄遣い、「参議院不要論」の再燃も考えられる。実際、参議院を廃止すれば、選挙事務もなくなるから都道府県の経費も浮く。国と地方のコスト削減ができ、かつ不要施設の売却・転用で国庫は、数兆円規模で潤い、国民は喜ぶ。ただ、参議院議員は自分の地位を捨てる覚悟はあるか。

 次に、憲法には衆参両院の不一致に備えて手当てがしてある。つまり衆議院の意思を国家意思とするように衆議院の優越が規定されている。これは、衆議院には解散制度があるから、より民意に近いという趣旨だ。ただ、首相の指名(六七条)予算の自然成立(六〇条)などを除き、法律案の再議決、与党が衆議院で「三分の二以上の多数」を占める必要があり、戦後六十年間この『宝刀』の出番がなかったにすぎない。

 しかし、世論というのは実にダイナミックである。小泉郵政解散では、「主権者意思」は大きく動いた。国民は「反対する野党と反対する与党の議員にNO!」といい、戦後憲政史上初めて、自民・公明の与党に衆議院の「三分の二以上の多数」を与えた。仮に七月の参議院選挙で自民党が敗北して、野党が与党の法案すべてに反対・否決すれば憲法の規定から言って何のための、参議院か! ということになる。国政の停滞を防止すべく、憲法が再議決の規定を用意しているのに、その活用を最初から否定する議員がいるけれども、それが国会議員の姿勢として妥当であろうか。それでは、何のための憲法か、という議論にもなってくる。参議院の存在意義が問われる選挙となる。






(上毛新聞 2007年5月16日掲載)