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NPO法人渋川広域ものづくり協議会長 岸 邦夫(渋川市渋川)

【略歴】 渋川高卒。美容室ジョー社長。県理容美容協会長。渋川広域まちづくりネットワーク協議会長などを務め、地域の活性化やボランティア活動に取り組む。

職場体験学習

◎純粋な心で仕事する

 初夏になると今年も恒例の職場体験学習の季節が到来して中学二年生がやって来る。ヘアを通して、ものづくりに関心を抱き、美容室を研修場に選択してくれた今年の生徒に大変興味があり、この季節を楽しみに待っている。

 私自身、中学二年生の当時はどんな生徒だったであろうかと、毎年自分の青春時代を振り返るが、まだ職業にはまったく関心がなかったようだ。近所の友達やクラスの仲間で早春から晩秋まで利根川で雑魚とりに興じたり、夏には真っ黒に日焼けして川で水泳を楽しみ、雑木林で清水わく場所に小鳥を求めて遊び、軒先では近所の仲間とベーゴマやビー玉遊びに夢中になり、山や川で遊ぶことが多かった。しかし現代の中学生は職業意識をしっかり持っており、職場体験学習を通して働くことの理解を深めて素晴らしい体験をしている。

 いよいよ職場体験第一日目が近い。私が楽しみに待っている純粋な瞳とのご対面があり、先輩が職場での注意事項や接客業の豆知識などを教えてフロア実習がスタートする。初日はフロアの清掃やタオルの洗濯、技術者のヘルプなどが中心で、無我夢中で行動しているせいか、時間の経過が長く感じるに違いない。

 二日目は、前日教えた作業工程が多少理解され、フロアでの行動がスムーズに進行し、冷静に作業が観察できるようになる。そこでパーマウエーブの誕生する過程を教え、ウイッグ(かつら)を使ってロッド(棒)の巻きつけ方を指導し薬液を塗布、十数分後にウエーブの誕生を確認すると生徒たちの顔がほころぶ。

 三日目は、毛染めの実習。生徒の希望する色で教材の毛髪に彩色作業をして、時間の経過を待ち、美しく希望色に仕上がったとき、ものづくりの楽しさに感激する。

 三日間の短い職場体験の中で思い通りのウエーブやカラーの創作を実習することは、白いキャンバスに向かって思うがままにデッサンするように、美容の楽しさをできるだけ易しく理解させることだと考えている。

 昨年の暮れ、美容学校から男子生徒が職場実習に来た。彼は中学時代に当店で職場体験をして美容師に興味をもち職業選択をしたと言う。

 職業意識が芽生え、仕事への興味がわく感性豊かな年代。純真な心で多種多様な職業をわずかな日数であるが、クラスの皆さんと分担して体験する。帰校後、クラスで異業種の報告会などを通して情報交換をすることにより、職場内容について一層理解を深めることができる。

 この経験により、学生から社会人になるときの不安が軽滅される。夢や希望をくじくことのないよう、大人が子供たちの健全育成に責任を持ち、離職率の軽減にもつながるように職場体験学習を活用していきたいと考えている。






(上毛新聞 2007年6月12日掲載)