視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
関東学園大経済学部教授 高瀬 博(太田市東別所町)

【略歴】 東京学芸大大学院修士課程修了。日本体育学会群馬栃木支部幹事、日本肥満学会会員。著書に「ライフスタイル自己改革講座」など。千葉県柏市出身。

ジュニアスポーツ選手

◎食事も練習もバランス

 「練習中は水を飲むな」。ひと昔前までは当たり前のように言われていたが、今考えるとぞっとする。スポーツ活動中に大量の水分補給を必要とすることは今や常識であり、普段の生活でも「熱中症」の恐ろしさは知られるようになった。近年、諸科学の発達は私たちに、スポーツにかかわるさまざまな有益な情報をもたらしてくれる。スポーツ選手の栄養補給の大切さもその一つである。

 かつて貧乏学生であった私は、練習は一生懸命やった記憶があるが、食事は空腹を満たすためのもので内容に気を配った記憶はあまりなく、今はとても悔やんでいる。周囲にも、将来を嘱望された選手で、大学に入って一人暮らしを始めたとたんに、食生活の乱れが一因で、体調不良やケガに悩まされ、競技成績が上がらず、競技から遠ざかってしまった例も少なくない。

 今や、スポーツ界をリードするような選手には、栄養スタッフがついていることは当たり前で、「スポーツと栄養」に類する出版物が書店に多く並んでいて、関心の高さを物語っている。

 ジュニアスポーツが盛んになるにつれ、熱心な親から、「いつ、何を、どれくらい食べさせれば良いのか?」という質問を受けることがある。「まずは好き嫌いをなくし、バランスのとれた食事を三食きちんと取ることが大切」と答えることにしている。

 実際、ジュニア選手に食事について質問すると「きちんと食べている」と答えるケースが多いが、「きちんと」と「満腹」では異なり、はたして栄養が足りているかどうかは疑問である。具体的には、タンパク質、カルシウム、鉄分、各種ビタミンは、かなり多めに摂取する必要があり、できれば「成長期」であることを踏まえ、バランスの良い「栄養フルコース型食事」が良い。

 野菜サラダからデザートまでなるべく多くの種類の食品を取るということであって、もちろん高価なメニューを並べるということではない。たとえ、コンビニ弁当でも、「○○丼」などの単品は避け、彩りのにぎやかな「幕の内弁当型」が良い。とかく練習だけに目を奪われがちであるが、長い目で選手の成長を願うならば、適切な食事で、強健でケガの少ない身体を育成することが重要である。かつて「根性が足りない」と一喝されていた身体疲労の原因が栄養不足による生理的防衛本能である場合も多く、正しい栄養補給によって解決するケースもある。

 一方、ジュニア期には肥満を気にして、「減量」のために極端な食事制限をするケースが見られるが、成長期の子どもには厳禁である。練習においても「野球肘(ひじ)」に代表される局所を酷使するような内容は避け、バランスのとれた練習メニューで、将来を見据えての選手育成が重要であり、そのため精神面も含めた多方面の知識を持った有資格の指導者の存在が望ましい。栄養も練習もバランスが大切である。






(上毛新聞 2007年6月19日掲載)