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かのはら・ふれあいネットワーク事務局長 新井 恒好(富岡市神農原)

【略歴】 高崎工業高建築科卒。一級建築士事務所長。1985年に県少年警察協助員を委嘱され、現在は県少年補導員富岡地区少年補導員連絡会会長を務めている。

地域の力

◎住民交流の拠点が完成

 「ゆかりは古し、貫前神社」。上毛かるたでおなじみの一之宮貫前神社には、古く九百余年の昔から式年遷宮の制度があり、十二年ごとに御仮殿(おかりでん)を営み、申(さる)年の十二月十二日から酉(とり)年の三月十三日の間、御神霊をこれに遷座し、社殿の補修のほか改修等を営むことは周知のとおりである。その際に建造された御仮殿の資材は、役目を終えると希望するほかの神社や地域に下げ渡されるのが慣例である。

 これに「かのはら・ふれあいネットワーク」が名乗りを上げた。区長を通して貫前神社にお願いし、下げ渡しいただいたのである。資材を有効に活用し、郷土の鎮守様である冨士神社の社殿等の整備とともに、境内の一角に住民の活動拠点となる多目的施設を造ろうというのである。そして、住民総参加の事業として位置付け、住民の間で意思の疎通を図り、連帯感と社会参加意識を高めることも大きな目的として掲げた。

 御仮殿資材有効活用事業と銘打ち、区長を中心に組長、冨士神社総代、ふれあいネット役員による建設委員会を組織し活動を開始した。事業は、建設委員を中心に進められ、資金調達も含め全区民に協力を呼びかけ大多数の賛同を得た。工事は冨士神社総代の一人、元棟梁(とうりょう)の永井和吉さんを中心に地区内の専門業者の協力を得て始まった。四月の御仮殿の解体作業には呼び掛けに応じた住民約六十人が集まり、三日間予定した作業を二日で終了した。その後、物置や多目的施設の建築は順調に進んだ。そして九月末ごろには予想を上回る大勢の住民の参加協力により、手づくりの施設が完成し、十月には冨士神社の例大祭に合わせ柿(こけら)落としが盛大に行われた。

 当日は真新しいヒノキづくりの舞台で八木節やお囃子(はやし)などの郷土芸能や舞踊が披露され、大勢の住民でにぎわった。また、建設委員の今井孝一さんが撮影した事業経過の記録写真が会場内に展示され、参加者の注目を浴びた。こうして一大事業は大成功に終わり、地区住民の地域づくりへの意欲と意識の高まりを感じることができた。完成した施設は「かのはら・ふれあい館」と名付けられ、子供たちのお囃子の練習や芸能祭、しめ縄作り講習会の会場など幅広く利用され、地域活動の拠点の一つになっている。

 そしてこの事業を通してパワーアップされた地域の絆(きずな)は、翌年、県警少年課を通じて富岡地区少年補導員連絡会が主催した「地域ふれあい事業」を成功させるなど、その後の活動の大きな力となった。

 地域ふれあい事業の詳細については次回以降に紹介することとして、ほかの機関からの要請をすんなりと受け入れ、実施できたことに地域の力を感じる。それぞれの地域がさまざまな活動を通して社会のニーズに対応できる地域力を養い育てることが重要であり、安全で安心して暮らせる社会への道ではないか。






(上毛新聞 2007年6月21日掲載)