視点 オピニオン21
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弁天通商店街青年会事務局長 山本 真彦(前橋市千代田町)

【略歴】 新潟市出身。中学時代、前橋市に転居。国学院大経済学部卒。農家での研修、フリーターを経て、2005年11月、弁天通りにアートカフェを開店する。

キャンドルナイト

◎「仲間意識」の共有を

 前橋弁天通りではあす三十日、昨年に引き続き「100万人のキャンドルナイト」という催しを開催します。

 「100万人のキャンドルナイト」とは、「電気を消して、スローな夜を」をコンセプトに、夏至の日前後の一定の時間、電気を消し、ろうそくの明かりで過ごすことにより、「さまざまなことに思いをめぐらせよう! 」と呼びかけているものです。ゆるやかに日本のあちこちに広がりをみせ、各地でさまざまなイベントが行われています。

 弁天通りのキャンドルナイトは、私たちが気づかないうちに前橋のまちから失われつつある風景であったり、その土地の記憶、人とのつながりを、この機会を通してチョッと足を止めて思いをはせ、みんなで共有できたらと思い、昨年から開催しています。個人的には、これまで二年間における弁天通りでの日常生活や、以前このオピニオン(五月十日付)でも紹介させていただいた「群馬青年会議・だべり場」での議論を通して、まさにその失われつつあるモノゴトを目の当たりにし、意識して、足を止めてみたりする毎日ですが、なかなか忙しい日々の日常の中では、そういったものに思いをはせることは難しくなっているのかもしれません。

 具体的に言えば、自分たちが生きているこの土壌は、この地に生きてきた先人たちが築き上げてきたモノ、思いのうえで成り立っているということを意識して認識すること、自分たちが生活する地域や行事に積極的に参加してみること、自分たちが住む地域は自分たちが創つくっていくんだという参加意識に思いをはせることです。

 そう言ってもきちんと実行できているかといえば、僕はまだまだの部類ですが、それらはすごく大切なことだと思っています。

 学生時代、隣に住んでいる人と会ったこともない一人暮らしを経て、今は現在進行形の人間関係が限りなく濃厚なこの土地で、生きているというより生かされている感覚を味わっています。この環境は、なんとも心強く、頼もしく、うれしく、楽しませてもらっています。聞くところによると、どうやら現代社会はそういう人間関係が希薄化し、ウザったいと思う人が増えてきているようです。

 そして実際、安心を得るがために家の鍵を厳重に締め、セキュリティーシステムを取り入れているようです。個人的な話で恐縮ですが、僕の祖母の家は今でも鍵を締める習慣がありません。

 ですが、どちらが安心で安全かといえば、僕は間違いなく後者を支持します。もちろん、実際物騒な世の中ですから、もしかしたら難しい話かもしれません。それでも疑心暗鬼に日々を暮らすより、周りに見守ってくれる人がいて、助けてくれる、助けたい人たちがいてくれるほうが、なんともいいがたい居心地のよさと安心感を味わえるのではないでしょうか。

 そして、それらを引き継いで、未来を一緒に創っていける仲間たちが近くにいることが間違いなく僕の糧になっています。






(上毛新聞 2007年6月29日掲載)