視点 オピニオン21
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駒沢大非常勤講師 若林 宏宗(太田市東長岡町)

【略歴】 駒沢大大学院修士課程修了。高校教諭、県教委勤務を経て桐生高校長で退職。太田情報商科・太田自動車整備の両専門学校長。著書に「南極大陸まで」など。

七大陸への旅

◎多様な自然と文化発見

 自然と人間社会の関係について、地理学者は、ドイツのラッツェルが「環境決定論」を、フランスのブラーシュが「環境可能論」を唱えた。決定論は「自然環境は人間社会に決定的な影響を与える」、可能論は「自然環境は人文現象(自然改変)を生じうる多くの可能性を有している」ということである。

 この両論の視点で七大陸をみると、決定論に近い地域は、一つは自然の強大な力に人間の力がとても及ばない所、二つには自然のままに人間社会を構築している所である。一つ目は火山・氷河・砂漠・極地・高山などの地域でアイスランドの一部、グリーンランド、サハラ・ゴビ・オーストラリアの砂漠、南極、ヒマラヤ・ロッキー・アンデス山脈などである。二つ目は文明はあまり進んでなく自然にうまく順応している地域だが、アフリカ大陸内陸部やアマゾン川流域などの一部の種族が暮らす所にすぎない。

 可能論は現在の地球上のかなりの地域に当てはまる。しかし、人間による自然への改変の行き過ぎは、地球温暖化をはじめさまざまな弊害を生み出している。七大陸を訪れる中で、世界各地でこの現状を認識した。今こそ、人間による自然の改悪を検証し、疲弊しているわが星・地球を正常に戻すべく、政府や国民が自覚し、行き過ぎを抑えるべきである。

 一方、オーストラリアのエアーズロックの観光基地ユララやアイスランド、米国・カナダの国立公園、あるいはケニア・タンザニアの動物保護区など自然環境を守るために知恵を絞り、経費をかけて最大限に取り組んでいる所も少なくない。このような自然保護の好例は、世界中に広めたいものである。

 文化面では各大陸種々さまざまで、その多様性は自然をはるかに上回る。特に宗教については、民族宗教はもちろん、世界宗教の中でもイスラム教などは理解が大変であった。私は仏教徒なので信ずることについて最低限通じるものがあったが、無宗教に近い日本人の方は各地の宗教を理解できない場合が多いようである。

 衣食住の基本的なことから、学問、芸術まで、諸民族間の文化の違いに相当のものを感じたが、半面、人間の幅の広さ、深さも思い知らされた。そして、この異文化の差の大きさを認識した上で、分かり合えることが多いことも実感した。例えば、日本が吸収した異文化では、近代化遺産として痕跡のある西洋文化の源流に行くと日本社会との共通面が理解でき、禅宗や柔道は世界のかなりの地域で理解され、吸収されている。

 ところで、七大陸を訪ねる端緒となった「地理教師見てきたようなウソを言い」の川柳について、見てきてない地理教師がウソを言うかというと、違うようである。日本の教科書をはじめ地理資料は正確なものが多いということを、実際の七大陸への旅で確認することができた。したがって、良い資料を使ってきちんと教える限り、「日本の地理教師はウソを言わない」ということができる。






(上毛新聞 2007年6月30日掲載)