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フード・アドバイザー 村木日出光(桐生市宮本町)

【略歴】 札幌市生まれ。漫画家、テレビディレクター、放送作家を経験。食への関心を深め、桐生市に会社を設立して、お米のマヨネーズなどを販売している。

肉の偽装問題

◎問われる企業モラル

 またまた発覚! 肉の偽装問題、本当に企業モラルが問われる昨今です。消費者は企業ブランドを信用して商品を購入、原材料の中身などあまり詳しくは見ていません。企業ブランドが信頼ブランドです。私どももよく外注製造で商品を開発しますが、そのとき製造元から送られた原材料を一つ一つ細かに信頼の名において表記することがあります。

 「自分の会社のみもうければ」という利益優先の姿勢が、今回のような事件を起こした原因ではないでしょうか。経営者は「消費者も悪い。販売店も問題だ」と、価格の安さを提供する企業努力の結果であるがごとく発言し、反省する姿勢がありませんでした。“安かろう悪かろう”の食品ではないか確認する必要があるのは、この問題企業の製品だけでなく、ほかにもあると思います。

 以前、添加物の開発に手腕を発揮した関係者が、添加物の恐ろしさを告白した際、ミートボールの話をしました。牛の骨から削り取る「端肉」を使うというのです。このどろどろの水っぽい原料に安い廃鶏(卵を産まなくなった鶏)のミンチ肉を加え、増量剤としての「組織状大豆たんぱく」(人造肉)、ビーフエキス、化学調味料、ラード、加工澱粉(でんぷん)、結着剤を混ぜます。保存性を高めるための保存料、pH(水素イオン指数)調整剤、色あせ防止の酸化防止剤も入れます。さらにソースはコスト削減のため氷酢酸を薄め、カラメルで黒くし、それに化学調味料を加えたソースもどき、ケチャップはトマトペーストに着色料、酸味料、増粘多糖類でとろみをつけたケチャップもどきを使用。こうして一パック百円のミートボールが完成し、飛ぶように売れたそうです。

 この商品開発の依頼者はスーパーであったとのこと。今回の肉偽装問題の社長がいみじくも語った「販売者にも問題あり」の発言は複雑です。果たして今回の問題とこのミートボールと、一体どちらにより大きな不安を感じますか? 原材料表示をどれだけの人が知っているでしょうか。知らぬは消費者ばかり。今や添加物のない商品を探すほうが大変です。

 最近のあるコンビニチェーンのコマーシャルの中に、「当社は、保存料、着色料は一切使用しておりません」というのがあります。消費者は「安心・安全」を疑うことなく、大手の宣伝だけに信頼して商品を購入することでしょう。しかし、ほかの添加物は入っていないのでしょうか。

 添加物使用は百パーセント悪いことではありません。食の低価格化、便利性を考えればなくてはならない場合もあるでしょう。適切な添加と使用を企業に望むしかありません。消費者も、低価格商品にはそれなりの理由が存在することを学ぶ必要があります。

 安心・安全を提供する企業努力が大切なのは言うまでもありません。過剰に添加物を使った食品を製造者はおそらく食べないでしょう。利益を優先するあまり、そうした食品を消費者に販売し、リスクを負わせるのはご勘弁願いたいと思います。






(上毛新聞 2007年7月8日掲載)