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吉井町ゆっくら走友会会長 古井戸 寿郎(吉井町吉井川)

【略歴】 中央大法学部卒。吉井多胡小、入野中、西小の校長などを経て退職。日本陸連公認審判員、群馬陸協理事、多野陸上クラブ会長、県教育コーディネーターなどを務める。

格言と座右の銘

◎目標実現の糧としたい

 夏、真っただ中、学校は夏休みだ。夏休みと運動を例に文を進めたい。休みだから、基本的には休めばいいことだ。ただ、休みのつかい方が、休み明けや以後の活動を大きく左右することも否定できない。人間往々にして、目標や目当てがないとやすきに流れやすい。

 したがって、休みを有意義に過ごすために、目標をもって、その実現を目指し努力したい。努力を長続きさせるためには、自分を奮い立たせる言葉、格言や座右の銘が必要となる。格言は、深い経験を踏まえた短い言葉で簡潔に教えや戒めを表す言葉だ。座右の銘は、文字通りいつも自分の座る場所に書き記しておき、自分を励まし戒める意味を持つ格言だ。

 格言を広く解釈すれば万人に共通する。「稲と運動選手は、夏に育つ」というのがある。稲と運動選手を人間に置き換えれば、「人間は暑い夏に大きく成長する」となる。

 この夏の炎天下、「練習は、不可能を可能にする」「練習で泣いて結果を見て笑え」などの格言やスローガンのもと、合宿を組み、冬場の大会に備える団体も数多くある。元日の上州路を走る実業団の駅伝チーム、箱根駅伝出場常連の大学や予選大会を目指す大学、全国高校駅伝大会を目指す学校などだ。

 私は、毎年いくつかの合宿地を訪れ、チームや選手の練習を見て、自己の研修や本大会での優勝、順位などの行方を探る一助にしている。

 合宿では、それぞれのチームは独自に格言的な合言葉・スローガンを設定し、目標の実現に向けて難しい練習に取り組んでいる。また、メンバー個人としても目標を立て、自分を奮い立たせる言葉を自分に言い聞かせながら練習に励んでいる。そのような中で、目標意識や課題意識がはっきりしている選手ほど、記録の伸びや成長の度合いの高さを示している。

 名伯楽といわれる指導者や名選手は自分を奮い立たせ、他人の心をも打つ簡潔明瞭(めいりょう)な言葉を指導や練習に生かしている。

 「ひとより一汗多く」は、私が尊敬し、吉井町ゆっくら走友会の名付け親でもある東海大学教授・宇佐美彰朗先生の言葉だ。宇佐美先生は、中学時代はバスケットボール、高校ではテニス、大学二年生で初めて陸上競技らしい練習を始められた。練習の結果は二年生から四年生まで三年連続して箱根駅伝で活躍された。卒業後は、マラソンランナーとしてメキシコ・ミュンヘン・モントリオールとオリンピックに三回連続で出場された。そのような体験・背景から生まれた言葉は、陸上競技や走る人だけでなく、一般社会人にも十分に通じる重みのある共通の格言となる。

 私は、宇佐美先生の造語「ひとより一汗多く」を日常生活で座右の銘とさせていただいている。人間で大切なことは、まず目標を持つことだ。その目標の実現のために、格言や座右の銘を心に刻み、練習や努力をして自分を大きく成長させる糧としたい。






(上毛新聞 2007年8月1日掲載)