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かのはら・ふれあいネットワーク事務局長 新井 恒好(富岡市神農原)

【略歴】 高崎工業高建築科卒。一級建築士事務所長。1985年に県少年警察協助員を委嘱され、現在は県少年補導員富岡地区少年補導員連絡会会長を務めている。

災害時の協力

◎住民同士の信頼が鍵

 「かのはら・ふれあいネットワーク」の活動の真価を問われる出来事が起こった。

 先月初旬にやってきた台風9号は県内各地に大きな爪(つめ)あとを残して通り過ぎた。中でも過去には比較的災害の少なかった富岡甘楽地域では未曾有の災害となった。富岡市内のわが神農原地区も余波による大雨で土砂崩れが発生し、住宅一戸が隣接する市道を乗り越えて流れ込んだ大量の土砂により浴室や台所の一部を損壊したほか、床下浸水や道路、田畑の冠水など大きな被害を受けた。私も土砂崩れの現場に駆けつけたが、目を覆うばかり。被災されたお宅では避難勧告が出されたまま帰宅が許されていない状態。しかし、市の災害対策本部では他地区の大きな被災地への対応に追われ、神農原地区まで手が回らない様子であった。

 そこでふれあいネットの出番である。被災した仲間のことを思えば一刻の猶予もならない。早速、茂木才一区長を中心に、区の役員、ふれあいネットの幹部で対策を練り、災害対策本部や他の行政機関とも協議し、神農原地区独自で復旧作業を行うこととした。方針が決まったのが台風の去った翌日の午後三時ごろである。直ちに作業に必要な機材を調達し、搬出した土砂の置き場も確保した。同時に区民に対し、組長やネットワーク傘下の団体を通じて翌朝八時からの作業への協力要請がなされた。勿論(もちろん)、強制ではなく「出られる方で結構です」という注釈付きである。

 翌日、スコップなどを手にした七十人ほどの人たちが集結した。区長の「安全を第一に作業にあたってください」という挨拶(あいさつ)の後、茂原伸紀・ふれあいネット代表理事の指揮の下、作業が開始された。女性陣は昼食の炊き出し、男性陣は土砂や瓦礫(がれき)の片付けである。重機の運転は近所に住むプロのオペレーター、伊藤勉さんが担当した。猛暑の中、作業は順調に進み、夕方までには敷地内の土砂や瓦礫は勿論、市道上の土砂や倒木もきれいに片付き、汚れた建物の外壁や路面を洗浄して無事終了した。そして、その日のうちに災害対策本部長である富岡市長に検分を願い、被災者の一時帰宅が許されたのである。

 今回のことは、日ごろ、われわれが地域活動の中で心がけている「自分たちでできることは自分たちで」の実践であるが、それにしてもたった一夜の呼びかけで七十人もの人たちが協力してくれたのは嬉(うれ)しい限りである。そして、特筆すべきは参加者のほとんどの人が協力するのがあたりまえという意識でいることである。ふれあいネットのさまざまな活動の成果が表れているのだろうか。

 いずれにしても地域での出来事に迅速に対応し、助け合えるシステムが構築されてこそ、安全で安心して暮らせる明るい街づくりが実現するのではないか。今回の出来事は地域コミュニティーの大切さをあらためて教えてくれた。各地での活動の輪が広がり、地域住民の一人一人が信頼の糸で結ばれ、明るく住みよい社会が実現することを望んでやまない。






(上毛新聞 2007年10月14日掲載)