視点 オピニオン21
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社会福祉法人アルカディア理事長 中田 駿(太田市高林寿町)

【略歴】 早稲田大卒。太田市の三枚橋病院(精神科)勤務を経て精神障害者の地域ケアに従事。県精神障害者社会復帰協議会長、NPO法人「糧」理事長。岡山市出身。

団塊世代へ

◎語り合う場つくりたい

 団塊世代の人たちへメッセージを送りたい。語りたいことが沢山(たくさん)ありすぎて、粗削りでかつ個条書き風になってしまうが、許していただきたい。

 その一 身体を大事にしてほしい。四十年余り、頑張り抜いてきた身体は、相当傷んでいる。一年に一度の人間ドックは欠かさず受け、したいことができる身体を保ってほしい。

 その二 身体がいかんともし難くなったら、あきらめよう。世間ではQOL(生活の質)を大事に!という風潮がある。この用語は延命医療に対する批判から生まれたものである。延命だけの医療は拒否したい。この意思を身内には伝えておいた方がいいのかもしれない。

 その三 青春時代に大学闘争の嵐が吹き荒れた。かかわり方はさまざまであっただろうが、各人がそれぞれに整理してほしい。次世代に「各人の言葉」をもって伝えてほしい、高度経済成長期への突入に「これでいいのか?」と異議を唱えたことの意味を。

 その四 次世代との断絶を埋め、問題意識を共有するよう努めてほしい。当時の水俣病などの公害は環境問題として、女性差別はセクハラ問題として、時代を経て今日の社会に引き継がれている。大学の在り方も問われている。そして戦争はベトナム以降も終わることなく続いている。

 その五 同時代に永山則夫がいたことを忘れないでほしい。彼は連続殺人を犯すが、「金の卵」であった集団就職の“終焉(しゅうえん)”期において「犯罪をもたらしたのは、貧困である」と述べている。世界的に格差が広がる中で富と貧困という問題を再考する上で忘れ難い存在だ。

 その六 私たち団塊世代をターゲットにした市場原理は拒否しよう。商業主義的に大量消費の状況に引き込まれることは避けたいと思う。

 その七 漫画は卒業しなくてもいい。私たちにとって少年期の『冒険王』、青年期のジャンプ、マガジン、ガロは面白かった。今、小説はつまらないが、漫画は面白い。イヤなことも我慢してきた私たちだから、これからは好きなこと、面白いことをしよう。

 その八 カラオケで新しい歌を唄(うた)わないようにしよう。私たちの持ち歌は、吉田拓郎、井上陽水、かぐや姫など。これらを堂々と唄えばいい。洋楽ではなんといってもビートルズだ。若い年代層にもビートルズは浸透しているので、共通の話題にはもってこいだ。

 その九 ジーンズは年をとっても捨てないでほしい。私たちにとってアメリカ文化は憧(あこが)れの的であり、ジーンズはその象徴であった。アメリカの言いなりになる私たちの国に苛立(いらだ)ちを感じながらも、アメリカ的文化を取り入れてきた。不思議な気質だと思うが、それとこれとは別問題と割り切った方がいい。

 まだまだ、伝えたいことが山ほどある。これから私たち団塊の世代がさまざまな場面で出会い、語り合っていく場がほしい。そうした機会をぜひともつくりたいと思う。






(上毛新聞 2007年10月26日掲載)