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石材店経営 小堀 良夫(富岡市富岡)

【略歴】 高崎工業高卒。富岡市教育委員長、富岡中央ロータリークラブ会長を歴任。石材店「石匠苑」の社長を務める傍ら、富岡市国際交流協会長。趣味は日本酒。

還暦雑感

◎出会いから学んだ人生

 H先輩へ

 先日、新聞記事を拝見しました。フロンの回収事業に精力的に取り組まれ、全国的に活躍されていらっしゃるそうですね。そういえば、ゴルフコンペでも「正確なパットを決めて準優勝した」と聞きました。私より一回りも年上とは本当に思えません。

 さて先日、親しい仲間が集まって、いきつけの店で私の還暦のお祝いをしてくれました。手編みの赤いマフラー、六十本のバラ、徳利(とっくり)と杯など、この店のカウンターで出会い、「人生のおつきあい」になった友人たちからのプレゼントでした。

 呼びかけたのはOさん。彼は悪性リンパ腫と闘いつづけています。半年以上に及ぶ入院生活と厳しい治療に耐えた彼に、今、悲壮感は全くありません。きざなファッションが妙によく似合う五十七歳。理論家、饒舌(じょうぜつ)、わがままですが、行動は速い。飲んでいて楽しいけれど、飲みすぎが気になる人です。

 私の倍くらいの体格の持ち主Sさんは、私と同月同日生まれ。仕事はキノコの菌床製造と販売で、その合間をぬって地域の子どもたちに柔道を教えています。仕事にかかわる特許出願を自ら行い、研究熱心が魅力です。

 Kさんは、乳がんを治療中。「お酒を飲まないとストレスたまって、がんになっちゃうから」といってビールと焼酎を飲みながら、手際よく、私に日本酒をお酌してくれていました。

 前日会ったのに、その夜の出席のことを内証にしていたYさん。地域活動に積極的に携わり、ミニコミ誌も発行して二十四年になります。苦労人ですが、それを感じさせず「熟年の悩みは俺(おれ)に聞け」と言い、頼りにしている先輩です。

 それから、もう三十年も前になりますが、この店に私を初めて誘ってくれたTくん。そして、私が仲人をしたUくんや歌姫と呼ばれているバラ作りのIさん…。

 その夜、一緒に居てほしかった人はほかにもまだ大勢いました。仕事の影響で体の調子が思わしくない人、ついこのあいだ心臓の病気で急死してしまった親友など…。考えてみると私は、三十代、四十代、そして五十代と、いろいろな場面で出会った大勢の人たちから、数えきれないほどの勇気とたくさんのパワーをもらいながら生きてきたように思います。それぞれの人たちに、それぞれ魅力のある人生がありました。

 H先輩と出会ったのは仕事の関係で、三十年も前になります。先輩には「経営」の厳しさや楽しさ、「仕事と自分」「時間を守ること」「オシャレ」等々だいじなことを教えてもらいました。そして今、自分の身近に手本となる人がいてくれることのありがたさ、幸せを心から感じています。「青春とは人生のある期間をいうのではなく、心の様相を言うのだ/年を重ねただけでは人は老いない/情熱を失う時に精神はしぼむ/希望ある限り若く、失望とともに老い朽ちる」(サムエル・ウルマン『青春』から抜粋)という言葉を思い浮かべます。

 「悠々自適」は理想ですが、生涯現役を続け、「完全燃焼」「円熟」に向かい、ほどよく力を抜きながら、いろいろ頑張ってみたいと思っています。ではまた。






(上毛新聞 2007年10月27日掲載)