視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
全国地域活動連絡協議会会長 中村 京子(大泉町仙石)

【略歴】 栃木県佐野市出身。1985年に児童館の母親クラブに入会。99年から県の地域活動連絡協議会会長。2007年4月から現職。

子育て支援

◎地域で目配り声がけを

 私が入園前の親子を対象にした児童館の親子教室に通い始めたのは、今から二十二年前のことです。夫婦共に県外出身者で地元に知人の少ない私は、当時一人で子育てに奮闘(?)していました。ちょうどそのような時、町の広報紙で目にしたのが「親子教室参加者募集」のお知らせでした。

 まさか、このことがその後の私の生活を左右するようになるなど知る由もありませんでしたが…。

 一九八五年四月、いよいよ親子教室のスタートです。それまで昼間は殆(ほとん)ど二人きりで過ごしていた親子にとって、何もかもが新鮮で、そこで出会う他の親子との触れ合いは楽しく刺激的でした。週一度の教室が待ち遠しく、そのうち教室日以外の日にも児童館に通うようになりました。

 しばらく通ううちに、私たちより少し先輩と思われる母親のグループに気付きました。そのグループは教室修了生の集まりで「母親クラブ」といい、主に児童館や幼稚園で子どもたちに人形劇や紙芝居、楽器演奏などを行い、その練習のために集まっていることを知りました。

 そんなある日、児童館行事で、彼女たちが準備や子どもたちの世話をしつつ、参加者に劇や演奏を見せてくれました。そして、子どもたちは勿論(もちろん)、演じている彼女たちが実に生き生きと楽しそうだったのです。私もあんなふうに生き生きと子育てしたいと思い、早速入会させていただきました。以来二十二年、子どものことや学校のことなどに悩み励まされ、助けられたり助けたり。先生方やクラブの仲間とのおつき合いは今も続いているのです。

 近年、少子化とともに親の子育て不安が大きな問題になっています。核家族化や地域力の低下など、若い親たちにとって子育て環境はあまり良いものではありません。孤立感や閉塞(へいそく)感の増大により数々の悲劇も生じています。これらの状況に対し、各方面で子育て支援の大切さが論じられ、行政などでもさまざまな取り組みが行われていますが、隅々まで行きわたっていないのが現状のようです。

 「まちの子は みんなわが子」。これは私たち母親クラブ(全国地域活動連絡協議会)の合言葉です。子どもは地域の宝。でも子育てはとても大変で、人生の一大事業です。だからこそ、子育て中の親子には「坊や、そっちへ行ったら危ないよ」とか、「お母さん、毎日頑張ってるネ」とか声をかけてくれる近所のおじさんやおばさんなど、地域みんなの協力や見守りが欠かせないのです。「まちの子は みんなわが子」の思いが、元気で優しい子どもや、しなやかで逞(たくま)しい母親(父親)を育てるのです。

 地域には、たくさんの団体や人がいます。そんな地域のみなさんのちょっとした目配りや声がけが、子育て真っ最中の親子への優しいメッセージになるのだと思います。

 特別な子育て支援策でなくてよいのです。「一人じゃないよ。応援してるからネ」の気持ちを、地域のみんなが伝えていくことが、支援の第一歩になるのではないでしょうか。






(上毛新聞 2007年11月13日掲載)