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新島学園短大学長 大平 良治(安中市板鼻)

【略歴】 新島学園中学・高校、中央大法学部卒。県企画部長、保健福祉部長、県教育文化事業団理事長などを歴任。2005年4月から現職。

地域再生

◎人材育成が最も重要

 今、地域再生が強く叫ばれている。

 人口減少と超高齢化やグローバル化の影響は大きく、深刻であり、地域を解体し崩壊させようとしている。山村地域においては、地域社会そのものが消滅してしまう限界集落が問題とされている。九月初めに群馬県を襲った台風9号は、この問題の重要性と緊急性をクローズアップさせた。市街地においては、商店街を中心に空洞化が進み、各地域でシャッター通りを現出させている。

 国も地域再生を重要な政策課題として取り組んできた。その一つは構造改革特区である。地域を限定し、規制を緩和し、成果が挙がれば全国に広げようという制度であり、五百近い提案が出され、三百余りが特区に認定された。

 もう一つは地域再生本部を設置し、国から地方への権限移譲や許認可手続きの一元化などを通して地域の再生を目指すものであり、地方自治体など現場からの地域再生構想が七百近く提案され、約百四十が認定されている。

 今、地域間の格差が問題にされ、これに対する取り組みが行われようとしている。また、平成の大合併がこの三月で一段落し、群馬県においても七十の市町村が十二市二十六町村となり、五十年ぶりに地域が再編成された。これを契機に、地域再生に向けて新しい地域づくり、まちおこしが行われようとしている。

 二〇〇〇年四月から地方分権改革が実施に移されている。明治維新以来、約百四十年間にわたって行われてきた中央集権型のシステムを改め、地域の個性と独自性を発揮することのできる分権型社会を創造することがめざされている。分権型社会を実現させるためには、市町村など地方公共団体への権限移譲や財源の充実確保が重要である。

 しかし、真の分権型社会を創造し、地域再生を実現させるために最も重要であり中核的な課題は、新しい地域人の育成であると考えている。

 群馬県の地域は、明治時代から地域の人材は地域で育ててきた歴史をもつ教育立県であった。ところが戦後、特に高度経済成長の時代において、多くの若者が地域を捨て、大都市へと向かっていった。地域に残った人たちはサラリーマンとして企業社会人となり、自分の生活の原点である地域社会(コミュニティー)に関心を持たないで生きてきた。今、その影響が表れてきたのではないかと考えている。

 私の住んでいる安中市は、昨年三月に合併して六万三千人の新安中市となった。安中は明治時代から「文教のまち」として知られ、全国的に活躍した人材とともに、地域を担い支えた多くの人材を輩出した人材育成のまちである。

 今月三日、新島学園が中心となり、安中市の共催により「文化と教育のまち安中の再生に向けて」というテーマでシンポジウムを開催した。歴史と先人から学ぶとともに、新しい地域づくり、まちおこしに向けての契機とすることができたのではないかと考えている。






(上毛新聞 2007年11月23日掲載)