視点 オピニオン21
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eラーニングプロデューサー 古谷 千里(吉井町)

【略歴】 北海道函館市出身。IT利用の英語教育が専門。国立大教授、米国コンテンツ制作会社ディレクターを経て、現在、英語学習ソフト開発に携わる。早稲田大非常勤講師。

教室にコンピューター

◎広がったネットワーク

 インターネットが一般の人々に公開されたのは一九九〇年代の前半です。つい最近のことだったのですね。興味はあってもなかなか手を出せないでいる皆さん、焦ることはありません。IT(情報技術)時代はまだ始まったばかりなのです。

 携帯電話が、電話よりもメールに多く使われるなどと誰が予想したでしょうか。コンピューターを操作するにはタイピングが第一の難関でしたが、そんなことはどこ吹く風、今では親指一本で巧みに携帯メールが書けるようになっています。最近の学生はパソコンのキーボードを叩たたくより携帯メールを打つほうが速いという調査結果もあるほどです。

 インターネットが科学研究者や軍事関係者から一般に公開されるやいなや、あっという間に私たちの生活の基盤となりました。旅行するにも、おいしいものを食べるにも、まずインターネットで調べてから。その結果、私たちの生き方、働き方、考え方、さらには感性までもが大きく変化してきました。

 私のコンピューターネットワーク生活が始まったのはまったくの偶然からでした。今から二十二年前に大学工学部の英語教師の職につき、大学に学生用タイプライターの購入を依頼したところ、先生方に笑われ、コンピューターを買う羽目になりました。安いコンピューターがイギリスにありました。英語しか使えないので英語教育に最適と考え、導入を決めました。ところが発注作業に戸惑っている間に、つながるコンピューターが発売されたのです。それがコンピューターネットワークを利用した英語教育の始まりでした。

 教師と学生の間でメール交換が始まり、さらに学生間、アメリカの大学生・高校生へとネットワークが広がっていきました。「十通書いたら外国の友達を紹介しますよ」と約束したところ、二、三日で十通書いてくる学生もいました。英語で、です。書き出したら止まらないというのです。若者の文字離れが指摘されていますが、読むことはともかく、彼らは書きたかったのです。お薦めのビデオ、好きなポップス、失恋の話など、めちゃくちゃな英語ですが、次から次へと書いてきました。

 教室という囲いの中で、学習者は決められたスケジュールに従い、決められた課題をこなし、決められた問題を解き、期待される答えを出します。このような方法が最適な教科はいくつもありますが、語学は、単語や文をいくら暗記してもなかなか使えるようにはなりません。宮崎県知事ではないけれど、「どげんかせんといかん!」

 コンピューターがその答えというわけではありません。しかし、コンピューターを語学教育に使ってみた結果、発見したことがいくつもあります。それらをこの紙面でご報告し、先生方、ご両親、そしてお子さんたち、さらには行政に携わる方々に「考える資料」を提供できたらと思っています。






(上毛新聞 2007年11月25日掲載)