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群馬大大学院医学系研究科教授 小山 洋(前橋市若宮町2丁目)

【略歴】 東京都出身。群馬大医学部卒。医学博士。2002年6月から現職。日本公衆衛生学会評議員。環境省地球環境研究企画委員。県のがん対策協議会等の委員。

県がん対策推進計画

◎患者や家族の声反映を

 群馬県におけるがん対策の推進計画がまとまりつつある。国の基本計画はすでに出されている。それに沿いながら群馬県独自の案を作成中である。今回から数回にわたって群馬県がん対策推進計画について意見を述べたい。

 がんによる年間死亡者数は一九八一年に十六万六千三百九十九人となり、脳血管疾患による死亡者数を抜いてわが国における死因別死亡の第一位となった。以来、一貫して増加を続け、二〇〇五年のがん死亡者数は三十二万五千九百四十一人で日本人の死亡原因の30・1%を占めている。

 国の基本計画や県の推進計画は「がん対策基本法」に基づくものである。この法律は〇六年六月に成立した。がんが死亡順位の一位になって二十五年後にようやくがん対策の基本を定める法律ができた。これまで三次にわたる「対がん10か年戦略」が立案・実施され、現在も進行中である。しかしながら、がん患者のニーズに対応しきれておらず、がん医療の地域格差も広がってしまった。

 厚生労働省、国立がんセンターを中心としたがん対策が行われているさなか、がん対策基本法が議員立法された意義は重大である。これまでの対策には、がん患者本位のがん対策という基本理念が欠けていた。がん対策基本法は、地域格差のない、がん患者本位のがん医療を基本理念とし、緩和医療や患者への支援体制の充実などを課題として掲げている。これまでがん患者のがんに対する恐怖や不安、がん患者を支える家族の悩みなどが取り上げられてこなかった。痛みのないがん医療や在宅でのがん医療、そして、納得した上でのがん医療が求められている。

 がんにならないことが一番だが、日本人の三人に一人はがんで亡くなる。死に至らず、がんが完治したという方も多く、日本人の半数以上が一生に一度はがんに罹(かか)るという時代になっている。がんにならない幸せな人生、がんになっても幸せな人生。それを支える社会環境の整備を進めていくべきだ。どのような整備を進めていくべきか、そこにがん患者の声や家族の意見を反映させていく必要がある。群馬県内で活動するがん患者会・家族会十一団体が集まり、今年三月に県がん患者団体連絡協議会が結成された。この会が、がん患者の声を結集する場として十分に活用されることを期待したい。

 また、がん対策推進計画には一般の県民の意見も生かされるべきだ。群馬県内では群馬大学や県立がんセンターなど十一病院が、がん診療の拠点病院として指定を受け、互いに連携しつつ、がん診療体制の整備を進めている。そのまとめ役として群馬大学では附属病院内に腫瘍(しゅよう)センターを設置した。同センターはがん医療に県民の声を反映させるため、今月八日(土)午後一時半から、前橋市総合福祉会館で地域懇話会を開催する。県民の方々にはこうした機会にぜひ、意見を出していただきたい。また、県の推進計画案はパブリックオピニオンの聴取を経て〇八年度から実施される。群馬県のがん対策がより豊かで実り多いものとなるよう意見を寄せていこう。






(上毛新聞 2007年12月1日掲載)