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美原記念病院看護部長 高橋 陽子(伊勢崎市宮子町)

【略歴】 伊勢崎高等看護学院卒。美原記念病院に入り、2004年から看護部長を務めている。06年からは伊勢崎敬愛看護学院で在宅看護論を教えている。

診療報酬改定

◎現場の実態を考慮して

 二○○六年四月の診療報酬改定で導入された「七対一入院基本料」は、病院経営に大きな衝撃を与えた。従来は、「患者十人に看護師一人」が最高レベルだったが、「入院初期の手厚い看護」を目的に、七対一看護に高い診療報酬が払われるようになった。

 七対一入院基本料とは、看護師が急性期病床の入院患者数七人に対して一人以上、常に病棟に勤務していることを求める基準である。この改定により、看護師不足が重大な問題となり、各病院にとって看護師の人員確保が喫緊の課題となった。看護師養成機関には、地方、他県からの求人が殺到し、現在においても看護師不足に苦慮している病院は少なくない。しかし、これは医療現場の実態に即したものなのか疑問である。

 例えば、ある病院において入院している患者は、意識障害や高度の麻痺(まひ)を呈する方々が多く、さらに高齢で認知症を合併している方も少なくない。そのため、看護必要度は極めて高く、患者のニーズに応えるため、以前から急性期病棟においては七対一入院基本料を満たす人員を配置していた。

 一方、同じ急性期の病態であっても、比較的若い患者や、障害が軽度である疾患に対して、同程度の看護必要度があるのかは疑問に思われる。すなわち、病態を考慮せず、急性期治療ということのみで一律に看護配置を手厚く配置することが、適切なのだろうか。

 私の勤務している病院では、脳血管障害急性期以降の患者に対する回復期リハビリテーション病棟、および筋委縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病などの患者の治療にあたる特殊疾患療養病棟における看護必要度を測定し、急性期一般病棟のそれと比較検討した。その結果、最も看護必要度が高いのは特殊疾患療養病棟であり、回復期リハビリテーション病棟と一般病棟に大きな差はなかった。

 特殊疾患療養病棟においては、神経難病の患者に対して、コミュニケーションを十分に図り、個別な看護ケアを提供するため、多大なマンパワーが必要となる。また、回復期リハビリテーション病棟においては、障害がある患者の日常生活の自立支援に対する看護ケアの必要性は極めて高く、現場に即した看護配置が求められる。

 すなわち、看護要員の配置基準は病期ではなく疾患特異性、看護必要度を考慮した制定が必要であると思われる。

 また、個々の患者に手厚い看護を提供するためには、看護師のマンパワーが不可欠であり、看護管理者は「看護職に選ばれる職場づくり」の実現に向けて、体制を整備し、人材確保に繋つなげていくことが重要である。

 看護の充実を図るため、○八年度の診療報酬改定に期待したい。






(上毛新聞 2007年12月7日掲載)