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足尾に緑を育てる会会長 神山 英昭(栃木県日光市足尾町)

【略歴】 栃木県旧足尾町(現日光市)生まれ。法政大卒業後、町役場に勤務。産業観光課長、税務課長、住民環境課長を歴任した。在職中に「わたらせ川協会」を設立している。

100万本の木を植えよう

◎足尾固有の環境学習

 私たちは、銅山の煙害等で荒廃した、足尾のはげ山に木を植えています。それは桜の苗木十本から始まりました。

 足尾銅山や地域に関する歴史的文献を収集し、後世に伝えようとの思いから一九九三年十一月、「わたらせ川協会」を設立しました。その協会の第三回総会(九五年六月)の際、渡良瀬川源流に位置する「大畑沢緑の砂防ゾーン」(国土交通省管理地)の東屋(あずまや)付近は見晴らしが良いので桜の木を植えて花見でもしようかと、気軽に桜の木を植えました。しかし、しばらくすると植えた桜の木十本がすべて枯れてしまいました。

 「それはまずい」ということになり、足尾製錬所周辺の山々を見ながら、翌年五月、渡良瀬川上流および下流の市民グループ五団体が集い、「足尾に緑を育てる会」を結成し、初めての植樹をしました。

 最初の年、九六年の五月は、百六十人が集い、百本の苗木を植えました。これが、「足尾の山に百万本の木を植えよう!」運動の始まりです。

 以後、毎年四月の第四日曜日を「植樹デー」とし、足尾の荒廃裸地化した山に木を植えています。“足尾銅山”“公害の原点”などの知名度から、多くの人びとが植樹活動に参加され、年々その人数も、植樹する苗木の本数も増えつつあります。今年の植樹デーには千三百五十人が集い、四千六百本の苗木を植えました。これまで十二回の植樹デーを実施してきましたが、延べ八千三百六十人が集い、三万五千三百本の苗木を植えたことになります。

 「足尾に緑を育てる会」はこれまで自主的な任意団体でしたが、二○○二年には特定非営利活動法人(NPO法人)として認証を受け、今日に至っています。この間、○○年からは、「地球環境―いま、私たちにできること―」をテーマに、その時々に応じて環境問題や地域の抱える課題を考える足尾グリーンフォーラムを開催しています。

 さらに、栃木、群馬の両県を中心とした関東一円から体験植樹に訪れる小学生などの活動をサポートしています。私たちが活動を始めた年は一年間で四団体でしたが、環境問題に関心を示す学校等が年々増加し、昨年は百十二団体が植樹に足尾を訪れています。

 このように、私たちは植樹デー、足尾グリーンフォーラム、年間を通じての体験植樹―の三つを柱に活動しています。

 今後もこれらの活動を続けていきます。そして、いまだに残る荒廃したはげ山をしっかり見るとともに、公害や緑化事業の歴史を学ぶことができる日光市営の足尾環境学習センターを見学し、植樹をする―。そんな「見て、学んで、体験できる足尾固有の環境学習」を推進していきたいと考えています。






(上毛新聞 2007年12月11日掲載)