視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
管理栄養士 松尾 綾(前橋市石関町)

【略歴】 共立女子大家政学部食物栄養学科卒。2004年、草津温泉フットボールクラブに入社。管理栄養士として、ザスパ草津選手の栄養管理を担当している。

スポーツ選手の体づくり

◎適切な食事がケガ防ぐ

 ザスパ草津の二〇〇七シーズンが終わりました。一年間大きなケガもなくプレーを続けられた選手、途中でケガに泣かされた選手、さまざまです。できれば一年間ケガをせずにプレーを続けてもらいたいものですが、サッカーは九十分間走り続けなければならない中、激しいコンタクトもあり、ケガというアクシデントに見舞われるのも仕方のない面があります。しかし、日々の体づくりの中でその確率を低くする方法はあります。食事もそのひとつです。

 人は食べた物をエネルギーにして体を動かし、食べた物を材料にして体をつくります。食べる量が不適切だったり、バランスが悪かったりすると、これらの働きが十分に発揮されず、結果としてケガをする確率を上げてしまいます。

 まず毎日の食事をバランス良く取りましょう。毎食、テーブルの上に(1)ごはん・パンなどの主食(2)肉・魚などの主菜(3)野菜・海藻・キノコなどの副菜(4)汁物(5)果物(6)乳製品―が必ずあるように心がけましょう。よく食事チェックを行うと、(1)―(4)までは用意されているご家庭が多いのですが、(5)と(6)はおろそかにされがちです。スポーツ選手に大切なビタミンCやカルシウムは果物や乳製品に頼っている部分が大きいです。これらが不足しないためにも(5)と(6)をお忘れなく。

 次に運動前から運動後までの栄養摂取を上手に行いましょう。栄養摂取はタイミングが重要です。運動中に空腹になってしまうとエネルギー切れとなり、動けなくなったり、脳のエネルギー切れにより集中力が低下し、ケガをしやすくなったります。かといって、運動直前に消化の悪い物を食べると消化不良を起こします。理想は運動する三時間前に食事を終わらせることです。しかしクラブ活動など、夕方から運動が始まる場合は食事から運動までの時間が空きすぎてしまい、運動中にエネルギー切れとなるおそれがあります。こういった場合、運動開始の一時間前くらいにエネルギーゼリー、バナナ、おにぎり、シンプルなパンなど消化の良い炭水化物でエネルギー補給をしましょう。

 運動中は脱水予防のためにこまめな水分補給を心がけましょう。

 運動終了後は三十分以内に食事を取りましょう。この時間はゴールデンタイムとよばれ、成長ホルモンの分泌が盛んになり、傷ついた筋肉の修復など、体をつくる働きが活発になります。この時に体の材料が供給されるかされないかで、この働きが大きく違ってきます。すぐに食事を取るのが難しい場合は、運動終了後すぐにおにぎり、牛乳、オレンジジュースなどで糖質とタンパク質を補給します。ただし、ここで食べる量は、この後に食べる食事に影響しない量にとどめましょう。

 今までお話したことはスポーツをする人にとって基本的なことで、毎日の生活の中で自然に行われなければなりませんが、きちんと続けるのは非常に根気のいることです。しかし、この基本的なことがケガに見舞われる確率を大きく下げてくれる要素のひとつだと思います。






(上毛新聞 2007年12月26日掲載)