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県点訳奉仕の会会長 高橋 洌(前橋市大利根町)

【略歴】 群馬大学芸学部を卒業後、県内の高校や県立盲学校に勤務し、高崎高通信制教頭で定年退職。元県バドミントン協会副理事長。2002年から前橋ランナーズ会長。

伴走ボランティア

◎汗かく喜び共有したい

 街中で白い杖(つえ)を持った人を見かけたら、どうなさいますか。こんな突然の質問に戸惑われるかもしれませんが、答えは一つではなく、さまざまでいいのです。状況によっては、「何もしない」でも正解なのです。しかし一般的には、皆さんの方から先に声を掛けてほしいのです。「こんにちは。○○です。何かお手伝いしましょうか」と。

 白い杖を持っている人、つまり視覚障害者は、近くに人のいる気配を感じていても、どなたであるか、はっきりしないからです。そのために、先に挨拶(あいさつ)をしたり質問したりすることはとても苦手なのです。そこで皆さんの方からの声掛けに反応して、コミュニケーションが成り立つのです。情報の把握が十分でなく、困惑しているのですから、晴眼者の皆さんの方から、その点を補っていただきたいのです。日常生活の中では、情報の八割が視覚を通して得られるといわれています。ですからその人の目の代わりをするため、ちょっと目を貸してくださればいいわけです。

 「この先、右へ大きく曲がります」「コースがちょっと荒れていますよ」。こんなアドバイスがあれば、一緒に楽しく歩いたり走ったりできるのです。リング状にしたロープを持ってガイドしてくれる「伴走」のボランティアが必要なのです。心地よい汗をかく喜びは、障害の有無に関係ありません。しかし、障害のある方が外に出ること、ましてスポーツに参加するには、困難な点が多過ぎます。私のかかわっている視覚障害者のグループ「ランモード群馬」(新楽和則代表)は、伴走してくださる方を求めていますので、その呼びかけの一文を紹介しましょう。

 <日ごろ自由に体を動かすことの少ない私達視覚障害者にとって、ウォーキングやランニングをすることは、とても楽しくとても大きな喜びです。思いっきり両腕を振り、汗をかく、こうしたことによって、とても開放的な気分になることができます。しかしながら、私達は、一人では自由に走ることはできません。一緒に走ってくれる「伴走ボランティア」という方の存在が必用なのです。「伴走ボランティア」といっても決して難しいことはありません。私達と一緒に歩いたり、少し走っていただけるだけでいいのです。速く走ろうとするのではなく、仲間と集まり楽しく体を動かし、語り合ったりすることを一番の目的にしています。私達と共に楽しく体を動かしてくれる、ただ、それだけで十分なのです>

 東京の代々木公園では、週末の土・日曜に視覚障害者の伴走練習会が行われています。いつも五十人を超える参加者で、初心者もベテランも関係なく、和気あいあいと楽しく練習しています。群馬でも「伴走ボランティア」が多くなり、いつでも練習できるようになれば、と「走る喜び」を共有できる日を夢見ているこのごろです。






(上毛新聞 2008年1月26日掲載)