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片品村文化財調査委員長 大久保 勝実(片品村鎌田)

【略歴】 片品村などの小学校教諭、中学校長を歴任。教諭時代から尾瀬、武尊山、白根山地域の動植物研究を続けながら、地域の歴史、古文書の調査研究を手掛けている。

地域住民の力

◎結集して子どもを育成

 新年を迎えると家々に手作りの門松が飾られ、正月らしい光景が見られます。

 新聞紙上で各地の注連(しめ)飾り作りの様子が報道されましたが、片品村でも昨年十二月末ごろ、注連飾り講習が子どもたちを交えて行われ、これが各戸の門口に飾られました。

 村ではこの注連飾りが一月十三日にはずされ、十四日に各地区の広場で焼くドンドン焼きが行われます。地区によってはドウロクジン(道祖神の意)ともいわれます。

 また、この日は厄落としの日ともされ、その年、厄年になった人(男性二十五歳、四十二歳、女性十九歳、三十三歳)は身につけていた品を道に捨て、ドンドン焼きの場でミカンなどを配り、厄落としをします。この夜、家庭で友人や親せきの人々とともに宴(うたげ)を開きます。

 正月飾りをはずしたあとには、小正月飾りが供えられます。この飾り物は、「ハナ」と「マユ玉」が中心になりますが、この「ハナ」はミズキ(片品村ではミズブサ、アカボヤともいう。植物分類で傘形花目(さんけいかもく)、水木科(みずきか)に属し、落葉高木。冬には枝が紅色となる)の白い幹を小刀で薄く削ると、長いらせん状や帯状など、作る人の技術でいろいろな形状となり、美しい飾り物になります。これをミズキの枝にさげ、さらに米粉で作った紅白のマユ玉を枝につけて神棚に供えます。

 この飾り物などを見ると、この地がその昔から林業や養蚕業で支えられていたことが察せられ、その風習が今に残されているものと思われます。小正月飾りは二十日にはずされます。この日がこの地ではエビス講の日に当たり、農家ではワラ仕事の始めといわれています。

 注連飾り講習は村文化協会民芸部の方や老人会の方が指導され、ほかにワラ工作のぞうり、長靴などの講習もされています。

 文化協会はこのほか、年間を通して、小中学校の子どもたちとの交流を実施しています。その主なものを挙げてみますと、書道部は書き初めなどの書法、文芸部は俳句・詩の作り方、美術部はデッサンや絵画の基礎を指導して交流しています。また、文化財部は村内の神社や寺院、石仏などを通して村の歴史を伝え、写真部は撮影技術、華道部は生け花の基本、菊花部は春から秋の開花まで菊作りの方法を指導、将棋部は子どもたちとの対局を行っています。

 このように文化協会の各部が、学校の部活動や公民館活動などと連携し、教師の皆さんとも協力して校内外で活動を続けているのです。

 このほかに老人会などは保育園、小学校低学年の子どもたちと昔の遊びなどを通して交流を持つ活動を行っています。

 村の学校に勤務する教師の皆さんは多くが遠方から通っている方で村民との触れ合いが少ないため、このような活動で互いに理解が深まり、子どもたちへの教育力向上の一助にもなることと思います。

 子どもたちは学校のみならず、その地域全体で育てていくものと考えています。父母も祖父母も、その持てる知恵と技術を子育てに生かしていきたいものです。






(上毛新聞 2008年1月27日掲載)