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県空手道連盟常任理事 中村 武志(太田市安養寺町)

【略歴】 群馬大教育学部卒。空手道の県連盟常任理事、県中学校連盟理事長、全国中学校連盟事務局次長。太田綿打中教諭で、同校空手道同好会顧問を務める。

武道人口の減少

◎歯止めかける方策を

 野球、サッカー、バレーボール。ほかにもさまざまなスポーツが多くの人々に愛好されている。スポーツは、自らプレーする壮快感と、一流選手の技を観戦する楽しさを提供してくれる。わが国に伝わる種々の武道も、古来の伝統を守りながら、スポーツの要素を取り入れることで、多くの人々に愛好されてきた。

 武道の多くは、合戦等で自らの身を守ると同時に、相手を倒す技としての起源を持っている。そして長い歴史の中で、日本独特の礼節を重んずる「武道」として完成された。現在では、競技スポーツの側面が濃くなっているが、ほかにはない歴史と特徴が、武道の持つ魅力の一つともなっている。

 しかし、今、急激に武道人口の減少が続いている。日本中学校体育連盟の調査によると、中学生の武道人口は、二○○二年度に柔道約五万六千人、剣道十三万二千人であったのが、本年度は柔道約四万九千人、剣道約十万人と減少した。この傾向は必ずしもすべての武道に共通しないが、最も普及している両道の状況は、武道の現状を映し出している。

 この急激な減少は、少子化の進展が原因であるという向きが多い。しかし、サッカーを例に取ると、同調査で○二年度約二十万八千人の競技者が、本年度約二十二万八千人と増加している。サッカーでは、部活動だけでなく、地域クラブも年々増加し、競技人口全体の伸びはさらに大きい。

 この例のとおり、少子化が進展しても競技人口は増える。少子化は減少の要素にはなっても、絶対的な要因ではないのである。もし、少子化だけに武道人口減少の原因を転嫁するのであれば、武道の将来は険しいといわざるを得ない。武道関係者の側の努力に不足はなかったかを検証するとともに、減少に歯止めをかける方策を、今こそ取らねばならない。

 本県では、武道団体(剣道、柔道、空手道、弓道、相撲、銃剣道、なぎなた)が連携し、県武道振興会を組織して、個々の普及、強化だけでなく、武道全体の発展に必要な事業を実施している。本年度は広報誌「ぐんまの武道」を創刊した。新年度は、初めての「ぐんま武道フェスティバル(仮称)」を開催し、武道にかかわるすべての人々が一堂に会して相互理解を深めるとともに、広く県民に武道のすばらしさを知らせる機会にするべく、準備を始めている。

 また、武道には、地域に根ざし、連綿と続いてきた道場がある。町々に道場が開かれ、同じ志を持つものが集い、師となる先人の教えを受け、日々研鑽(けんさん)に努める場となっている。道場は、地域スポーツの拠点としての役割も果たしてきた。地域と連携したこのシステムを大いに生かしていく必要があるだろう。

 今こそ武道にかかわるすべての人々が協力し、知恵を出し合い、武道のすばらしさを発信する時である。これは、長い伝統の中で培われた誇るべき「武道」にかかわる者としての責務であると考える。






(上毛新聞 2008年2月4日掲載)