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NPO法人キャリア倶楽部理事長 太田 和雄(太田市新井町)

【略歴】 早稲田大政経学部卒。野村証券を経て、情報システム会社などで人事労務を担当。その後、NPO法人を設立した。ぐんま若者サポートステーション統括責任者。県職業能力開発審議会委員。

キャリア教育

◎保護者は身近なモデル

 「七五三現象」という言葉をお聞きになったことがありますか? これは、入社して三年以内に会社を辞めた中卒・高卒・大卒の新卒者の離職率を指した言葉です。二〇〇三年三月の新卒者の三年以内の離職率が中卒70・4%、高卒49・3%、大卒35・7%であることが、〇七年度版「青少年の現状と課題」(青少年白書)で明らかになりました。若者の就労をめぐる問題では、非正規雇用から抜け出せないフリーター問題、働きたくても働けないで立ち止まっているニート(若年無業者)の就労問題のほか、正社員として就職した若者の早期離職や離職率の高まりといった問題も見逃すことができない状況です。

 白書では、「若者がせっかく職を得ても、自ら抱いたイメージと現実が異なるなどの理由で、数年で辞めてしまう事態が生じている」と指摘。学生時代に職業観を身に付け、主体的に進路を選択する能力を育てるキャリア教育強化の必要性を強調しています。

 この「キャリア教育」とは、「望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付けさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる」教育のことをいいます。

 確かに、離職率の高さは職業感の未熟さに起因しているかもしれません。離職率を下げるためにキャリア教育を推進する意味もよくわかりますが、これらを学校教育の現場に任せる以前に、家庭でできる、より確実なキャリア教育の手立てがあるような気がしています。

 それは、父親や母親が「働く」意味を子どもたちにしっかりと伝え、できれば働いている姿を見せていくことです。保護者がどんな仕事をしていて、それが社会的にどんな意味があるのかとか、日ごろから働く喜びや楽しみなど、仕事を通じての喜怒哀楽などを語り伝えていってほしいのです。保護者は一番身近な、若者のキャリア教育のモデルであり、サポーターです。

 私たちのNPO法人キャリア倶楽部は、キャリア形成支援を通じて地域社会に貢献しようという事業目的のもとに設立された団体です。メンバーは、企業での人事担当者としての経験や、教育機関でキャリア教育に携わった経験が豊富であり、かつ、現在、職業能力大学校やハローワーク主催講座、若者支援NPOなどで講師や相談業務に従事しているキャリアコンサルタント、産業カウンセラーたちです。人事・教育のプロたちがキャリア形成支援という、「大人のおせっかい」をやいています。






(上毛新聞 2008年4月13日掲載)