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管理栄養士 松尾 綾(前橋市石関町)

【略歴】 共立女子大家政学部食物栄養学科卒。2004年、草津温泉フットボールクラブに入社。管理栄養士として、ザスパ草津選手の栄養管理を担当している。

試合前の食事

◎力の発揮できる計画を

 ザスパ草津の選手は試合の日にどのような食事をとるのか、という質問を受けたことがあります。彼らは試合会場のピッチに姿を現す前にどのように食事をとってくるのでしょうか。

 試合があるからといって豪華な食事を作る必要はありません。いつも食べ慣れたものを食べるのが一番いいのです。しかし、試合で九十分間戦い続けるには考慮しなければならないことがあります。

 まず一つ目は炭水化物中心の食事にすることです。車にガソリンが必要なように、人の体も「燃料」がなければ動き続けることはできません。その「燃料」にあたるものが炭水化物なのです。自動車のガソリンも入れられる量に限りがありますが、人の体も炭水化物をエネルギーとして蓄えられる量は限られています。よってその都度、炭水化物を摂(と)らなければならないのです。

 二つ目はビタミンBを多めに摂ることです。ビタミンBは、摂取した栄養素をエネルギーに変える時に必要な栄養素です。せっかく炭水化物を多く摂っても、ビタミンBが不足した状態では効率良くエネルギーに変えることはできません。

 三つ目は消化に負担のかからない食べ物を選ぶことです。食べ物を消化するのは体にとって大仕事です。試合前、体を休ませて少しでも良い状態にするために、大仕事である消化という仕事を少しでも減らしてあげましょう。

 具体的に何を食べたらよいのか。例としてザスパ草津の選手が食べているものを紹介します。「冷しゃぶサラダ、ホウレンソウ・ハムのパスタ、カボチャソテー、若竹煮、フルーツ、牛乳」。試合前日の夕食メニューです。前日の夕食は、普段の食事の主菜の一つをパスタに変えています。そして、もう一つの主菜は、ビタミンBが多く含まれる豚肉にすることが多いです。主菜が豚肉でない場合、大豆製品、枝豆などを副菜に入れ、ビタミンBが多く摂れる工夫をします。

 当日は試合のキックオフ時間に合わせて食事時間を調整します。朝食は午前六時半にいつもどおり食べます。デーゲームの場合、朝食の次はキックオフの三時間半前に軽食を食べます。軽食の内容は「力もちうどん、おにぎり、パン、フルーツ」などを自分で量を調節しながら食べます。そしてキックオフまで、エネルギーゼリー、100%果汁ジュースなどを飲みながら炭水化物を補給していきます。

 それを食べたからといって試合に必ず勝てる食べ物はありません。しかし、今までやってきたことを百パーセント発揮できるかどうかは、どのように食事をとるかに関係します。百パーセント力を発揮するためにはきちんと考えて食事計画を立てることが重要なのです。






(上毛新聞 2008年4月17日掲載)