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大泉町社会福祉協議会会長 阿部 忠彦(大泉町丘山)

【略歴】 元邑楽高校PTA会長、元連合群馬館林地協議長。日本酒指導士師範。現職のほか、大泉町サケと遊ぶ会顧問、大泉町18区長。

介護施設の現場

◎従事者の待遇改善を

 この春、ある保育専門学校の卒業式と入学式に出席しました。卒業する学生たちは、胸を夢でいっぱいにふくらませて、これから活躍をするであろう福祉、介護の職場へ、この仕事を天職と信じ巣立っていきました。

 また入学式は、数ある専門分野の中からこれらのコースを選び、意欲に燃え、はじけるように目をキラキラと輝かせながら臨んでいました。

 少子高齢化の時代に入り、平均寿命が年々延びている今、介護や養護を必要とする人が確実に、そして急激に増加してきています。その一つの例として、県内の特別養護老人ホーム(特老)は百十八施設で、定員の総計は現在約五千四百人です。

 しかも入所待機者数は、延べでその二・三倍の一万二千六百人にもなっています。中には複数の施設に重複して申し込んでいるケースも含まれてはいますが、それにしても施設数、定員とも極めて不足しているのが現状です。

 問題解決のためには県、市町村単位で今後の人口構成を考え、早急に施設の増設や収容能力の拡大を図ることが急務です。

 一番の問題点は、収容能力が仮に整ったとしても、マンパワーが絶対的に不足していることです。現実問題として、特に介護現場の第一線で働いている人たちの給与など待遇は十分か、といった点です。携わる人たちすべてにとって、それぞれ将来の人生設計が成り立つだけの待遇をしなければなりません。

 現状では、それらはまだまだ不十分です。せっかく意欲に燃え、この仕事を天職として取り組んできた若者たちが、処遇問題のため中途でリタイアすることも多々あると聞いています。

 国も県も市町村も、福祉や介護の現場にもう一度しっかりと目を向ける時です。各議会の議員も同じだと思います。そしてマスコミも、もう一度、現場で何が起きているのか、何が問題なのか、どうすべきかを報道することが必要だと思います。

 年金問題や社保庁問題、道路特定財源の問題、後期高齢者医療制度(長寿医療制度)などと同様、これからますます大きな問題となることは間違いありません。外国人の介護士などを受け入れる前に、現場の日本人たちの大胆かつ大幅な待遇の改善が急務だと思います。

 今日の日本の繁栄をしっかりと支え築いてきてくれた高齢者の方々。中でも障害などで介護がどうしても必要となった方々が年々急増しています。加えて東毛地域では外国籍の方の高齢化や要介護者の人口増も現実のものとなってきています。早急に対応を検討すべき時です。






(上毛新聞 2008年4月27日掲載)