視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
足尾に緑を育てる会会長 神山 英昭(栃木県日光市足尾町)

【略歴】 栃木県旧足尾町(現日光市)生まれ。法政大卒業後、町役場に勤務。産業観光課長、税務課長、住民環境課長を歴任した。在職中に「わたらせ川協会」を設立している。

限界集落対策

◎中高年青年隊を結成へ

 昨年一月、栃木県の下野新聞に「限界集落 県内十九カ所」という記事が載っていました。限界集落とは、六十五歳以上が人口の50%を超える集落で、独居老人世帯が増え、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難な集落といわれています。

 日光市に合併する前の足尾町には、県内十九カ所のうち九地区があり、約半分を占めていることになります。旧足尾町は、一九七三年、足尾銅山が閉山となり、ほかにこれという産業もなく、多くの銅山従事者が職を求めて離れていきました。閉山当時一万人だった人口も三十五年が過ぎた今では、三千人以下。いわゆる少子高齢社会が進行中の地域です。

 いま、わが国ではさまざまな分野で格差社会が進行しています。人々が便利な都会に集まり、田舎はますます少子高齢化が進み、社会的共同生活の維持が困難な集落は増えるばかりです。このような現象は、いまに始まったことではありません。七○年、政府は過疎地域振興のため「過疎地域対策緊急措置法」を成立させました。栃木県では足尾町のほか、茂木町、馬頭町が指定されました。

 全国の過疎地域においては、各種の振興策が講じられてきましたが、そのほとんどの自治体が人口減少に歯止めをかけられず、苦悩している現状です。限界集落をいかに支えていくかは、至難のことといえるでしょう。

 しかしながら、「限界集落」に居住する一住民として手をこまねいているわけにはいきません。そこで、気持ちも体も元気で、多少なりともこれまで何がしの恩恵を受けてきた地域社会に貢献したい心を持つシニア世代が集い、「中高年青年隊」(仮称)を結成し、地域の活動に参加していきたいと考えています。

 昨今、家族の崩壊が社会問題ともなっています。子は親を敬い、親は祖先に畏敬(いけい)の念を表し、さらに親はどのような時代を迎えても子に生きる力を授けることが肝要です。

 祖先、親、子の絆(きずな)を結ぶためには、先祖が眠る墓に参ることと、併せて墓所の清掃をすることです。いずれは自分も世間の方々のお世話を受けて仲間入りする場所だからです。地域の人々が連携し、そして家族の絆を強固にするため、お彼岸とお盆の前にお墓の掃除をすることが大切だと思います。

 さらに昨今、若い人々が極端に少なくなり、向こう三軒両隣を中心とする組合での葬儀が困難となり、葬儀屋に依頼するケースが増えています。そこで、近隣者が、他界した親しい人の葬儀にお参りできる体制づくりに努めたい。中高年青年隊を結成し、限界集落対策に協力したいと思っています。






(上毛新聞 2008年5月31日掲載)