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群馬大社会情報学部准教授 伊藤 賢一(前橋市下小出町)

【略歴】 山形県出身。東京大卒、同大大学院修了。博士(社会学)。2001年から群馬大社会情報学部講師、03年から同助教授。専門は社会情報学、理論社会学、社会学史。

スーパーのレジ袋

◎有料化に踏み切っては

 もう七年前になるが、ドイツ語の研修のため一カ月ドイツで過ごしたことがある。環境先進国として知られているドイツは、当時から環境問題に対する人々の意識が高かったようで、ごみの分別方法はかなり細かく指定されていたし、紙や瓶・缶のリサイクルも日本よりも随分徹底していた。最近よく話題になっているスーパーのレジ袋は有料(私が使っていたスーパーでは、当時の値段で一枚二十円ぐらい)であった。

 余計なごみを増やさないためにレジ袋を使わない方がいい、ということは頭では分かっていたものの、はじめは買い物袋を持ち歩く習慣が身についていなかったため、何度か有料のレジ袋を買う破目になった。しかもこれがすぐダメになった。やはり布製の買い物袋を持ち歩くのが合理的である。

 そのうちに気がついたのだが、周りのドイツ人もときどき買い物袋をもっていないことがある。ある時目撃した若い女性は、担いでいたリュックの中に、購入したばかりのタマネギやチーズをそのまま放り込んでいた(あるいは彼女は買い物袋を持たない主義だったのかもしれない)。野菜はトレーやビニール袋に入っているものはなく、むき出しのものを量り売りである。客は自分で重さを量って、秤(はかり)から出てきたバーコードをレジに通すことになっていた。必要な分だけ買えるので合理的といえようか。とにかく、基本的にむき出しなので、いろいろなものに匂(にお)いが移るのではないかと心配になったが、こういうことは気にしなければ気にならないものらしい。

 そうこうしているうちに、私もすぐにドイツ流のやり方に慣れた。帰国した時には、スーパーのレジ係が、トレーに入った魚や洗剤・入浴剤などの匂いが移りそうな物を、さらにビニール袋に包んでくれたりすると、「余計なことをしてくれる」などと思ったりするようになっていた。

 富山県では今年四月よりスーパーのレジ袋有料化に踏み切ったという。英断である。実は富山県には親戚がいるのでよく訪れるのだが、昨年から地元のスーパーは布製の買い物袋を販売しており、ポイントカードの得点があるのでそこを利用する客は皆その袋を持っている。袋はなかなか特徴的なデザインで、スーパーの宣伝にもなっている。

 こういうことは、一部のスーパーだけが実施したのでは効果が限定的なので、もちろん一斉に行う方がよい。そろそろ本県でも取り組んでみてはどうだろうか。はじめは面倒に思うだろうが、急速に慣れるものである。地球温暖化は人々の意識が変わるのを待ってはくれないのだから。






(上毛新聞 2008年6月1日掲載)