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県点訳奉仕の会会長 高橋 洌(前橋市大利根町)

【略歴】 群馬大学芸学部を卒業後、県内の高校や県立盲学校に勤務し、高崎高通信制教頭で定年退職。元県バドミントン協会副理事長。2002年から前橋ランナーズ会長。

訓練で生活範囲拡大中

◎途視覚障害者

 視力や視野に何らかの障害がある視覚障害者は、全国におよそ三十万人いるといわれています。この数は、身体障害者全体の一割弱ですが、六十歳以上が七割を占めており、ここでも高齢化が見られます。

 視力や視野の機能を基準にした障害の程度により、大活字や強度の眼鏡などを使用することによって文字を読むことも可能な方もいますが、点字または音声によらなければ文字情報が得られない方が六割弱と聞いています。

 県内で、視覚障害者手帳を持っているのは四千七百余人で、点字常用者はその四分の一にも満たない状況だそうです。また、十八歳以下の視覚障害者は六十人です。県立盲学校で学んでいる児童・生徒は数十人で、高等部の生徒が半数を占めています。このことは、病気の進行やけがなどで視覚障害になった中途視覚障害者が多くなってきていることも挙げられるかと思います。

 ちなみに、県立点字図書館(前橋市新前橋町)での利用状況をうかがったところ、六百人弱の登録者があり、月平均で点字図書五十冊、録音テープ百三十巻、デイジー図書(録音図書の音声データ)二百二十枚ということです。

 私たちは日常生活の中でさまざまな情報を得ていますが、そのうちの約八割は目からの情報(視覚)によるといわれています。その視覚に障害のある視覚障害者にとっては、日常生活の些細(ささい)なことまで、その不自由さは大きなものがあります。

 それらの中でも情報の収集と歩行・移動が最も大きな不自由とされているということです。まして中途視覚障害者、特に事故等で突然、重度視覚障害者になった人にとっては、その克服には多くの困難があり、努力が必要とされています。

 私は、昨年から中途視覚障害者の生活訓練事業で、点字の学習のお手伝いをさせていただいております。県内各地から本年度も三十数人の方が、楽しみに通ってきています。古希を迎えた私よりも高齢の方も、指先に神経をこめての点字の触読、点字器で一点ずつ点字作成に取り組んでいます。

 また、諦(あきら)めかけてもいた白い杖つえを使っての室内歩行から、路上歩行訓練にとチャレンジしています。一点一点、そして一歩一歩と歩みはゆっくりですが、着実に歩を進め、やればできることを実感し、確信から自信へとさらに生活の範囲を広げています。

 中には、躊躇(ちゅうちょ)していた外出も何回かの伴走仲間の練習会に参加して、ウオーキングからジョギングへ、そして憧あこがれの大会参加や登山へと夢を膨らませている方もいます。中途視覚障害者との点字学習は、サムエル・ウルマンの「青春」を思い起こさせてくれます。






(上毛新聞 2008年7月21日掲載)