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渋川市文化財調査委員 今井 登(渋川市北橘町)

【略歴】群馬青年師範学校(現群馬大教育学部)卒。2001年まで県文化財保護指導員。渋川市文化財調査委員のほか、県埋蔵文化財調査事業団理事。




竹文化

◎地域づくりの核に

 渋川市北橘町(旧北橘村)は、平成十三(二〇〇一)年、第十六回国民文化祭群馬大会の竹工芸フェスティバル会場として竹文化の魅力を全国に向けて発信し、好評を得たことは記憶に新しい。その後も単なるイベントで終わることなく、竹の良さを再発見し、地域の活性化を図る活動が進められている。
 
竹工芸家として著名な綿貫清氏(上南室在住)は「日本の文化は竹からといわれるように、日本人ほど竹に親しみ、竹を愛してきた民族は少ないようだ」と述べている。養蚕を基幹産業とした農村生活における竹の需要は特に高く、農家の周辺には竹林が目立った。群馬の気候風土に適した竹は、多方面に利用されて「人と自然との共生」の重要な役割を果たしてきた。幼少期に遊んだ竹馬乗り、七夕の竹飾り、地下茎を鞭(むち)に変えて勉強を教えてくれた熱心な先生の顔。夏は草刈り、冬は木の葉集め。背負った籠(かご)の温かみが忘れられない。

 温暖化防止対策が大きなテーマとなった主要国首脳会議が今月、北海道で開催された。「成果と課題」が総括され、持続的発展を世界で模索することとなったようである。七日の開会日は、日本の「祈りと宴(うたげ)」の民俗文化を伝える「七夕」であった。会議に参加した首脳が「世界の平和と人類の幸福」の共通課題を短冊に認(したた)め、星に祈り温室効果ガス半減化をめざす行動方針の検討の決意を示された。軽々しく言えないが、この重要会議の成功に付加価値を与えたと思う。議論の内容が全世界に広がり、地球規模での行動化へ連動することを期待したい(中期目標を示された英知はすばらしいと思った)。

 農業形態の変化、生活の現代化等により、竹の需要が激減し、竹林の荒廃等が目につく中、十五(二〇〇三)年、たちばなの郷民俗・民芸の館(現北橘歴史資料館)のソフト事業「竹工芸教室」で、竹工芸家、綿貫氏より、竹の特性、加工技術等について、基礎・基本から学んだ人たちが、北橘村竹親会(角田徳市会長)を結成し、竹林の再生による竹材の育成、基礎・基本を重視した竹工芸品の作製により、地域の活性化、竹文化の向上に貢献されている。全国工芸展への出品、全国商工祭での実演、地域文化祭での活動が注目され、優秀賞作品が目立つ。

 八崎三区の竹の子会(茂木幸夫会長)が十三年、竹の原二〇〇一番地に竹の子モニュメントを設置し、七年を迎えた。百年後の二十二世紀に向け、誇れる橘の郷に竹をキーワードにした地域づくりを進めている。

 このような目標をもった地域づくり活動が点から線へ、線から面へと連携するような施策を行政にお願いしたい。





(上毛新聞 2008年7月31掲載)