視点 オピニオン21
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県空手道連盟常任理事 中村 武志(太田市安養寺町)

【略歴】群馬大教育学部卒。空手道の県連盟常任理事、県中学校連盟理事長、全国中学校連盟事務局次長。太田綿打中教諭で、同校空手道部顧問を務める。






スポーツ選手強化

◎空手を五輪正式種目に


 いよいよ北京五輪が開幕。肉体の限界に挑み、力のすべてを出して真剣に戦う選手たちの躍動は、今大会でも人々に多くの感動をもたらすだろう。各競技のトップアスリートが集うオリンピックは特別なものである。

 北京五輪に挑む選手たちは生活のすべてをかけて肉体を鍛え、技を磨いて備えてきた。しかし、プロ野球選手やスポンサーが付く一部の選手を除くと、その処遇は決して恵まれていない。五輪商業化の批判はあるが、そこに渦巻く莫大(ばくだい)な金の多くは選手たちには還元されない。生活の保証なしでは、選手がすべてをかけて戦うことは難しい。

 わが国では、JOC(日本オリンピック委員会)強化選手としてA指定されれば一カ月二十万円が助成されるが、それは一握りの選手だけである。選手たちが生活を成り立たせ、仕事として競技に取り組める環境を整えることが必要ではないだろうか。

 その方策として、地域のスポーツクラブの充実を挙げたい。このクラブの規模を拡大するとともに、各地に誕生しているプロのサッカーや野球のチームを巻き込んでいく。わがチームとして応援すれば、観客動員も増えてクラブの収入増につながるはずだ。会員の負担金と合わせて、十分に経営が成り立つと考える。

 クラブでは、地域の特色に応じて選手を採用し、現役時は競技に専念させ、引退後はクラブの指導者として働いてもらう。クラブには会員の健康維持から選手育成までの各競技のコースを設け、トップ選手たちは子供たちの目標として、またメンバーの誇りとして、そして一流の指導者としてクラブの活動を支えるのだ。指導者として残れなくても、現役選手の時期だけでも生活を安定させられるはずだ。ぜひとも実現したい課題である。

 空手道は残念ながらオリンピックに参加できていない。あまり知られていないが、ラグビー、ゴルフなどと並び、IOC(国際オリンピック委員会)の採用候補として最も近いところにある。世界に普及し、欧米でも認知度が非常に高い。しかし、オリンピック正式種目ではないので、前述のJOC強化選手になることもできない。一握りの有望な選手でさえ生活のために競技を断念、または能力を伸ばしきれずに競技生活を終えているのが現実である。五輪正式種目であるかは競技者にとって、とても大きな問題なのである。

 二〇一六年の夏季五輪の最終候補地に東京が選ばれている。私たちの世代は東京五輪の興奮と感動も、記憶でなく記録でしか知らない。東京で日本発祥の世界の武道「KARATE」が晴れ舞台に立ち、本物の感動を生で味わえることを、関係者として夢見ている。



(上毛新聞 2008年8月8掲載)