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俳人 鈴木 伸一(前橋市若宮町3丁目)


【略歴】国学院大卒。1997年より「上毛ジュニア俳壇」選者として多数の青少年俳句に接する。各地の小中高校で俳句授業を行い、青少年が俳句に親しむ環境づくりにも努めている。



ジュニア俳壇

◎自信持つきっかけに



 林桂氏と私とで交互に選を担当している「上毛ジュニア俳壇」(毎水曜日掲載)も、早いもので開始から十一年の歳月が経過した。この間、青少年からの作品投稿は年を追うごとに増加しており、概算だが、ここ数年の年間投稿総数は六万句に達しようかという状況である。それに伴い、作品の質も確実に高くなっていることは言うまでもない。何にせよ、率直にうれしく思っている。

 ところで、こうした数多くの作品のうち、九割がたは学校からの団体応募によるもの。もちろん、意欲的な個人投句者も見られるが、やはり現在の「ジュニア俳壇」の充実ぶりは、小中高校に大学も含めた、それぞれの教育現場における先生方の熱心な指導に支えられていると言うべきであろう。私も、俳句授業や教職員の俳句指導研修などで学校を訪問する機会が増えているが、この一事からも、教育現場での俳句に対する関心の高まりを実感している昨今である。

 さて、このような状況を踏まえ、俳句への関心が高まってきた理由を、折に触れて考えている。幸いなことに、十一年という歳月の中で、県内各地域の多くの先生方から俳句指導に関する手紙を頂戴(ちょうだい)したり、また授業などでうかがった際に直接、先生方から話をお聞きしたりして、私なりにいくつかの答えを導き出すことができた。

 「<ものを見る目>を育てたかった。<見えているのに見ていない>場面が子どもの生活の中に多く見られたので」(北毛地区、Y・K教諭)

 「自己の感性を磨き、表現力を高める機会になればと思って」(西毛地区、K・K教諭)

 これらは俳句指導を始める動機として、たいへんよく理解できる。俳句の短さが、児童生徒にも比較的なじみやすいという利点もあるだろう。

 「ふだん学習面で目立たない子がジュニア俳壇に載り、それがきっかけで自信をもち、他の子からも認められるようになり、うれしかった」(中毛地区、K・T教諭)

 一方、こちらは一定期間の継続的な指導ののちにあらわれた、ある種の教育的効果とでも言うべきものだが、例えばこうした点などが、教育現場での俳句に対する関心の高まりをもたらしている大きな理由の一つとして挙げられるのではなかろうか。

 現代の青少年たちに共通した特徴として、「自己肯定感の乏しさ」ということがしばしば指摘されている。K・T先生の言うように、俳句を通した自己表現が他者の共感を呼び、それによって、青少年たちが自信を持つことに多少なりともつながってゆくとしたら、「ジュニア俳壇」選者として、これ以上の喜びはない。



(上毛新聞 2008年8月27掲載)