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県点訳奉仕の会会長 高橋 洌(前橋市大利根町)


【略歴】群馬大学芸学部を卒業後、県内の高校や県立盲学校に勤務し、高崎高通信制教頭で定年退職。元県バドミントン協会副理事長。2002年から前橋ランナーズ会長。



ランニングブーム

◎“民芸的走り”続けたい



 今年の夏は北京五輪、高校野球、高校総体と炎天下の八月でもスポーツ大フィーバーに、チャンネルを切り替えながらのテレビ観戦を楽しんだ方も多かったのではないでしょうか。

 三万人ものランナーが大都心を駆け抜けた二月の東京マラソンでは、全国から十五万人の応募があったということです。来春の大会は五千人増やした定員が、募集開始の二日間で定員をオーバーして抽選となることが決定したといいます。ほかにも長野マラソンをはじめ、山中湖や諏訪湖などのマラソン大会等で定員オーバーのため早めにエントリーを終了したり、新たに定員を設けたりする動きが出てきています。

 前橋シティマラソンでも、この二、三年は毎回千人ほどずつ増えてきて、第十回の記念大会となる来春からは、定員を六千人として先着順受け付けを検討せざるを得ない状況になってきています。道路状況や開催時間等々の関係でのやむを得ないギリギリの選択ともいえます。

 こうした背景には、健康づくりを踏まえての第二次ランニングブームを迎えたことがあるのではないでしょうか。若い女性ランナーの増加にも喜びをかみしめています。

 米大統領が走ることなどから世界的なブームを呼び、日本でも中高年を中心に「市民ランナー」の言葉を定着させたのが一九七〇年代でした。前橋の地を中心にゆっくり、長く、楽しく走ることをめざす「前橋ランナーズ」の誕生もありました。そこでは、ランニング指導の先覚者である若き山西哲郎先生を群馬大学に迎えて以来、自然に親しみ、上州の風をとらえ、利根の水の流れを友にした、走りの文化を教えていただいてきました。

 熊本走ろう会の会長は「遅いあなたが主役です」「瀬古選手は芸術品、俺(おれ)たちは民芸品」と、中高年ランナーを表現されていました。私たち前橋ランナーズのメンバーはサラブレッドではなく駄馬にすぎないかもしれませんが、この地に育った、この地にふさわしい“心の走り”を続けてきた民芸的ランナーの集まりとも自負しています。

 先日、多くの会員とともに前橋市陸上競技協会や県内各地からの走友を迎えて、創立三十周年の記念パーティーを開くことができました。歴代会長をはじめ多くの先輩たちの積み重ねてきた一歩一歩が着実に芽生え、そして醸成されてきた小さな走りの文化を、記念誌「あしあと」(第三号)にまとめました。九十一歳の走友を交えたホノルルマラソンツアーで今年の記念事業を締めくくります。

 これからは健康で走り続けられる喜び、感動の走りの文化を、障害者とも共有することも大切なことだと考えています。




(上毛新聞 2008年8月29掲載)