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管理栄養士 松尾 綾(前橋市石関町)


【略歴】共立女子大家政学部食物栄養学科卒。2004年、草津温泉フットボールクラブに入社。管理栄養士として、ザスパ草津選手の栄養管理を担当している。



ウエートコントロール


◎筋肉量にも気を付けて


 スポーツ選手には、コンディション維持の一環としてウエートコントロールが必要になる場合があります。ウエートコントロールといっても、ただ体重を増やしたり減らしたりすれば良いわけではありません。ここで重要になってくるのが除脂肪組織(体組成で水分・体脂肪を除いたもの。筋肉や骨などが含まれる)です。一般的に同じ体重でも除脂肪組織が多い選手の方が競技力が高いといわれています。体重とともに体脂肪を測定し、除脂肪組織の増減を調べることはとても重要です。

 減量したい場合、気を付けることは、余分な体脂肪を落として除脂肪組織は減らさないようにすることです。体重が落ちても除脂肪組織まで落ちてしまうと競技力が低下してしまう恐れがあるからです。

 減量しなければならないと感じた時、一番初めに三食の食事の量を減らしてしまいがちですが、それよりも前にまず体のためにならない食べ物を減らすことを考えましょう。例えば甘いお菓子やスナック菓子、炭酸飲料、カップ麺(めん)などをつい口に入れてはいませんか? これらの食べ物はエンプティーフードと呼ばれ、体にとって必要な栄養素はほとんど含まれず、余分なエネルギーばかりの空っぽの食べ物です。

 また、アルコールも一グラム七キロカロリーと高カロリーにもかからず運動のエネルギーには一切使われず、体脂肪として蓄積されてしまいます。これらの余分な食べ物を一番初めに見直しましょう。三食の食事には、運動するためのエネルギー源や除脂肪組織を維持するための栄養素が含まれています。安易に三食の食事を減らすことはスポーツ選手にとって危険です。

 次に増量したい場合ですが、気を付けることは体脂肪を増やしすぎないことと除脂肪組織を増やすことです。除脂肪組織を増やすには筋力アップのトレーニングも不可欠ですが、食事においては第一にタンパク質の必要量を確保することです。タンパク質は日常的にトレーニングを行っている場合、一日に体重一キロ当たり二グラム必要です。それ以上は摂取しても筋肉合成量は変わらないことが分かっています。

 タンパク質摂取量を十分に確保しても増量が不十分な場合は、ごはん、パン、麺類などの炭水化物を多く摂取するようにしてエネルギーを確保しましょう。朝、昼、夜の三食でたくさん食べるのは大変だという場合は、食事回数を増やしましょう。

 減量も増量も正しく行わなければ、ケガなど故障のもとにもなりかねません。正しく行って強い体をつくりましょう。


(上毛新聞 2008年9月22日掲載)